雑貨のはなし│AITTA

美しき着物の世界を仙台から発信―AITTA―

ヴィンテージの着物や帯をはじめとする日本の伝統的な織物に新たな息吹を吹き込むAITTA。

2014年に誕生したこのブランドは、間もなく10年を迎えます。

代表の高嶋マチ子さんは、「私は30歳から着付けの仕事に従事してきました。その中で、お母さまやおばあさまから受け継いだ着物を持て余している方が多く、悩んでいるということを痛感してきました。また、私自身祖母が他界した際たくさんの着物を遺してくれたのですが、『これを活かさなくては!』と強く思い、着物が衰退する一方でどうにか多くの方に着物を日常的に楽しんでいただく方法はないかと考えました。それがAITTAを立ち上げたきっかけです」と話します。

子どもの頃から着物に親しんできたとはいえ、洋裁の経験はゼロだったという高嶋さん。
「洋裁もデザインも本格的に学んだことはありませんでしたが、人とちょっと違うオシャレが好きでした。幸運なことに、着物を洋服に仕立て直し活かしたいという漠然な想いに応えてくれる腕の良い服作りのプロたちと巡り合うことができ、スタートさせることが叶いました。最初はお客さまのお宅へ伺い、お持ちの着物を見せて頂いた上で『こういったものはいかがでしょうか』と提案するようなセミオーダーメイドでお洋服を仕立てていたんです」


写真:大島紬からできたコート

着物からお客さまのイメージに合った洋服を丁寧に仕立てる…。そんなAITTAの手しごとにピンチが訪れたのは、2020年のこと。

「コロナの影響と母の介護で、今まで続けて来たことが全てできなくなってしまいました。それで、初めて(仙台市産業振興)事業団さんに相談して、『ホームページの再構築やオリジナル商品をつくり、海外へのアプローチやオンラインでの販売をしましょう』というアドバイスを頂きました」

それをきっかけに「海外進出支援企業である仙台箪笥の老舗ブランド、門間箪笥店さんに橋渡しをしていただき、OBIランナーを香港にてテスト販売することに。

アジア圏の富裕層をターゲットに、仙台箪笥や工芸品と共に着物の帯を使ったテーブルランナーをご提案していただくために託しました。

現地の方の反応や好み・要望のリサーチ、輸出や翻訳の面で協力を得られ、極力負担の少ない形で海外へのアプローチができることを実感。

今後はラグジュアリーな着物服の販売を視野に、台湾・香港・シンガポールなどのアジア諸国へアピールしていくつもりです」


写真:リバーシブルのジャケットは、AITTAのセンスが光る逸品。男性だけでなく、女性もカッコよく着こなせます

そして、その頃に偶然出会ったのが、アパレルブランドの量産商品の設計から生産までを担うOEMを生業としている現スタッフ。高嶋さんのビジネスに新たなきっかけを与えてくれました。それまでオーダーメイドだけだったAITTAにレディメイド(既製服)がラインナップされたのです。


写真:着物の裏地を裂いて編んだセーター

「私が培ってきた仕立て服のノウハウと、縫製工場で生産する製品づくりを掛け合わせて、オーダーメイド服と既製服の両立をはかれています」

洋服地のみを手掛けてきたスタッフにとっては、ほぼ初めて手に取る和服地。

スタッフ曰く、「日本が生み出した和服地というものはこんなに美しいんだ!と感動するのと同時に、生地幅が狭いため型紙づくりが全く異なる上、主な素材もシルクなので、お互いの経験を結びつけるまでに四苦八苦した」そう。

高嶋さんがやってきた仕立て服の仕事と、縫製工場で生産される工業製品の仕事は少なからずかけ離れた工程の差がありました。

「私は洋裁技術に関する知識が乏しいので、『ここをこうしたい』とデザイン先行で話をするので…」と苦笑しながらも、「ものづくりの奥行きを理解し、製品毎に見合ったつくり方を選択すること。そこでまたひとつ学びを得ました」と、話します。


写真:佐野地織でつくった名刺入れ。味があります

最近では、宮城県南部にある丸森町の伝統工芸である佐野地織を使用した商品も展開しているAITTA。
今後、目指す先について伺いました。
「着物地をはじめとする日本の織物の素晴らしさを、もっともっと多くの方に知ってもらいたいというのが私たちの願いです。日本国内の方々はもとより、海外のお客さまにも手に取っていただいて、日本の布の可能性を感じていただけたら」と、高嶋さん。

AITTAの商品は現在、青葉区錦町にある「木香テラス」内の「GALLERY Meguru」で購入することが可能です。
洗練された着物服や小物にぜひふれてみてはいかがでしょうか?

AITTA(GALLERY Meguru)

所在地 981-0952 仙台市青葉区錦町1−13−7 長刀丁アネックス1F 木香テラス(モッコウテラス)
営業 木・金・土曜日 11:00〜17:00
URL https://aitta.jp/

雑貨のはなし│旅する obico

旅する obico


着物の帯をアップサイクルして、バッグやインテリアとして新たな息吹を吹き込んでいる仙台のブランドobico。2022年のブランド立ち上げ以来、さまざまな商品の発案、製造、販売を行ってきました。

そのobicoの2024年は「旅するobico」がテーマ。これまで以上に日本らしさを追い求め、デザイン性と機能性を兼ね備え、旅に連れて行きたくなるような商品を目指しています。

そのひとつとして誕生したのが、このボディバッグ。両手が使え、バッグを身体の前に持つことができるので、旅行の時に重宝します。また、日常のカジュアルなシーンにもスタイルと気品を与えてくれるでしょう。

2024年5月14日までは、仙台空港2階コンコースにてポップアップショップも開催し、このボディバッグのほか、新作の「プラチナセレクション」なども販売中。また、国際線免税店では、常設で商品を販売していますので、仙台空港から海外にお出かけされる方は、ぜひ立ち寄ってみてくださいね!

よいみせ│itoshigoto

広瀬川沿いに広がり、おしゃれなカフェや飲食店なども軒を連ねる仙台の人気エリア・米ヶ袋。その一角の雑居ビルの2Fにある毛糸専門店が「itoshigoto」です。
オーナーの小山未紗さんが2020年にオープンし、輸入した毛糸のほか、ご自身で染めた毛糸や手編みの靴下や子供服なども販売しています。


写真:カラフルな毛糸が壁面にずらりと並びます

小山さんは「東京に住んでいたころから、毛糸を染めてマルシェに出したりオンラインで販売したりしていたんです。仙台出身なので、いずれは仙台に帰りたい、お店を持ちたいなという思いがありました。コロナが自分の生き方を見直すきっかけになって、ちょうどそのころ仙台の大きな毛糸屋さんが閉店するというので、私が帰って毛糸屋さんをやろうと思ったんです」と話します。
小山さんが編み物をするきっかけとなったのは、その家庭環境にありました。


写真:小山さんが編んだ靴下。お店で販売しています

「私の母も編み物をしていましたし、祖母の妹がかなり編み物をする人だったので、その影響が大きいですかね。でも、私が本格的に編み物にハマったのは、フィンランドに留学していたときなんです。フィンランドの冬は寒くて夜が長い。だから、フィンランドの人って男女関係なく編み物をする人が結構いて。普通にスーパーに毛糸が置いてあるくらい、生活になじんでいるんです。それで私も編むようになって。最初につくったのは、スヌードでした。寒いからつくってすぐに活用できて楽しくなっちゃって。それでどんどんエスカレートしていった感じです(笑)」。
帰国後、小山さんはSNSで海外の人たちが自分で毛糸を染める様子をみて、自身でも毛糸を染めるようになったのだそう。


写真:好きなものに囲まれて仕事をしている小山さんは、とてもいきいきとしています

「キッチンで簡単に染められるんです。自分の欲しい色にできるし、小ロットなのでお客さまの反応をみながらできるのもいいですね。特にテーマは決めてはいないのですが、今だと春っぽい色が並んでいて、秋になるとこっくりした色が増えて…という感じにはなりますね」。
店内には古い編み機なども並び、「この編み機でいろいろつくったりしているんです。現役なんですよ」と、小山さんが楽しみながら商いを続けている様子がうかがえます。


写真:さまざまな素材、色、太さの毛糸が並んでいて、見ているだけでも楽しい

「将来的には、お店と家を一緒にしたいなって思っていて。私の祖父母が呉服店を営んでいたのですが、1階がお店で2階が家…みたいなのがずっと理想で。あとは、刺し子の糸を染めている人とか布屋さんとか、ボタン屋さんとか、個人でやっている手芸周りの人で集まって何か大きい手芸屋さんみたいな感じで一緒にできたら楽しいなとも考えています」。
小さいながらも、楽しくてあたたかな小山さんの店「itoshigoto」。編み物教室なども開催しているので、興味はあるけど未経験…という方も、気軽に訪ねてみてはいかがでしょうか。

itoshigoto

取材/2024年4月