タコ焼きよりもタコ焼きの味!?
仙台で「たこ揚げクン」、爆誕!

仙台市に本社を構える食品卸会社「かね久」と老舗かまぼこメーカーの「鐘崎」がタッグを組んで、新たな商品を開発しました。その名も「たこ揚げクン」。その新商品お披露目会が、去る10月8日に行われました。

北海道などで水揚げされるミズダコは、加工の段階で皮をむかれます。しかし、ミズダコ10kgのうちおよそ1kgを占める皮の多くが未利用となっていたのです。

この状況に立ち上がったのが、「みらい・バリュー・TOHOKU 企画」でした。これは、水産資源の漁獲量の減少、枯渇の深刻化を受け、各団体や企業の強みを活かした産学官連携で、貴重な資源を有効活用し、商品開発から販売までを行うプロジェクト。このプロジェクトをけん引する、かね久が鐘崎に声をかけて実現したのが、この「たこ揚げクン」だったというわけです。


写真:たこ揚げクンの原材料となるミズダコの皮。遠藤社長の呼びかけで商品化が実現しました

かね久の遠藤伸太郎社長から声をかけられたという鐘崎の嘉藤明美社長は二つ返事でOK。

嘉藤明美社長は「弊社でもかつてタコを使用したかまぼこをつくっていたのですが、タコの価格高騰で製造を中止していました。今回、お声がけいただいて光栄です」と話していました。

遠藤社長も「今は資源として漁獲量が減っているだけでなく、『価格が高い』『調理が面倒』などの理由で魚の消費量も落ちています。こうした加工食品にすることによって、気軽に楽しんでいただけたら」と話していました。

本物のタコ焼きのようなタコの風味と、かまぼこの持つ食感の両方を楽しめる「たこ揚げクン」。グルテンフリーで、ヘルスコンシャスの方だけでなく小麦アレルギーのある方も味わえるのが大きな魅力。


写真:グリーンカレーになったたこ揚げクン。絶品です

ミヤギシロメ入りのグリーンカレーや、能登産の根菜と高級魚・のどぐろでつくったかまぼこを使用したおでんなど、関連商品も販売されるとのこと。


写真:おでん風のたこ揚げクンは、これからの寒い時期にぴったりの商品

かね久の冷凍食品自動販売機で販売されていますので、普段の食卓だけでなく、年末のパーティーの一品としても活躍してくれそうですね。

株式会社かね久

所在地 〒984-0015 宮城県仙台市若林区卸町2丁目6−4
TEL 022-353-7697
URL https://kanekyu-panko.com/

株式会社鐘崎

所在地 〒984-0001 宮城県仙台市若林区鶴代町6-65
TEL 022-231-5141
URL https://www.kanezaki.co.jp/

よいみせ│籠屋ハセガワ

宮城県東松島市の住宅街にたたずむ、1軒の蔵。この場所で、代々伝わる古い木造の蔵を改装して営業しているのが「籠屋ハセガワ」です。
取材班が到着すると、とびきりの笑顔で「いらっしゃーい!」と元気よく代表の長谷川明美さんが迎えてくれました。


写真:築140年の蔵をリフォームした「籠屋ハセガワ」の店内

「うちでは、山ぶどうの樹皮を利用した籠細工をつくっています。梅雨時期に山に入り、山ぶどうの蔓の樹皮を剥いでくるんです。この時期でないと樹皮が固くなってしまうので剥ぐことができない。4週間から6週間が勝負なんです。そうして剥いだ樹皮はカビなどを予防するためにも3か月から6カ月ほどしっかり乾燥させます。そして編む直前に数時間水に浸してから角材のカドなどをつかってなめす。そうすると、余分な皮がはがれて、きれいなヒゴができるんですよ」。


写真:山ぶどうの樹皮は、乾燥させた後で編む直前に水に浸し、なめしてから使用します

樹皮を5ミリ、10ミリのヒゴ状にして、それを50本程度でまとめてつくり、それを編むときには霧吹きで湿らせつつ編んでいくそう。その工程は実に手間のかかったものですが、長谷川さんはなぜ、この籠バッグなどの籠細工を始めることにしたのでしょうか。
「20代の若かりし頃に出合ったのですが、そのときは『素敵だな』とは思ったものの、手が出なくて。憧れだけはずっとあって、ある時、知人の雑貨屋さんをお手伝いをすこししていたときに、『自分でつくれないかな?』って思うようになって。もともとものづくりが好きで、娘の洋服をつくったりしていたから、これもいけるかな…?って(笑)。それで教えてくれる教室を調べたら、当時、日本に2カ所だけあって。そのうちのひとつが、古川にある『ちいくろ工房』さんだったんです。それで先生のところに行って習うようになり、技術を身に付けました」。


写真:東松島市の住宅街にたたずむ、「籠屋ハセガワ」の工房兼店舗

こうして山ぶどうの蔓で小物を編むようになった長谷川さん。籠細工を販売しようと思ったのは、意外なことがきっかけでした。
「今、工房と店舗にしているこの蔵は、夫の実家が所有しているもので。義父が『お前たちに遺すのも大変だろうから、俺の代で壊す』って。義父としては私たちに負担をかけまいとしていってくれたのですが、私はどうしてもこの蔵を残したくて。それで義父さんに『私に使わせてほしい』とお願いして残してもらったんです。蔵を残すからには修繕費と維持費が必要で、『それなら籠細工をつくって売ろう』となり、また一から勉強しなおした感じです」。


写真:もともと手芸が好きで、得意だったという長谷川さん

140年超の歴史を持つ蔵の修繕は、いわゆる一般の工務店では難しかったようで「義父の伝手で、知り合いの一人親方にお願いしました。躯体も傾いていたり、柱も古くて色が変わっていたりで大変な修繕工事を行っていただきました。内装に関しては、仙台市内のアトリエモルソーさんにお願いしてつくっていただきました」と長谷川さんは話します。


写真:代表的な網代編の籠バッグ

一般的によく見られる編み方は「網代編」というものですが、長谷川さんが主に製作している籠バッグは、籠の中が見える「うろこ編」という技法で編んでいるのだそう。
「東京にある教室で、編み方をいくつか教えてくださる教室があって、そこで習ってきたんです。洋服をつくったりするのが好きだったもので、バッグの中に布を入れたいなって思って。中に入る巾着ひとつで表情がガラッと変わるのも素敵だなって思ったものですから。それに、うろこ編は網代編に比べると制作時間も短いんです。網代は3週間から1カ月、うろこは2週間程度かかります」。


写真:内側に入れる巾着でさまざまな表情を見せるうろこ編の籠バッグ

今は、お客さまからの注文も多く、「お待たせしている状態が続いています。それでも…という方はぜひお店のほうに来ていただき、展示してあるサンプルからオーダーをお受けする形になります。今後は、日本だけでなく海外への進出も考えておりまして、10月には香港の展示会に出品する予定。それから、世界各国でワークショップもやってみたいですね」と、長谷川さん。

東松島から、手づくりのクラフトで世界へ―。
長谷川さんの挑戦は始まったばかりです。

籠屋ハセガワ

所在地 〒981-0503 宮城県東松島市矢本大林28−1
TEL 070-8338-6052
URL http://kgyhsgw.com/

\マッチ箱シリーズのニューフェイス!/

ヤギのイボンヌのペーパークリップが誕生しました

「暮らす仙台」でおなじみの「マッチ箱」シリーズに、新作が登場!
これまでにも、宮城にゆかりの深い「こけしクリップ」や、仙台メディアテーク内にある「KANEIRI museum Shop6(ろく)」とタイの漫画家ウィスト・ポンニミットさん(通称 タムくん)の人気キャラクターがコラボした「マムアンちゃんクリップ」生み出し、おみやげ品として人気を博してきたこのシリーズ。次なるキャラクターは、岩手県宮古市に本店を構えるヤギミルク専門のスイーツ店「パティスリーレドシェーブル」(運営:しあわせ乳業株式会社)のオリジナルキャラクター、ヤギのイボンヌです。


写真:ヤギミルクのクッキー。食べ終わった後の缶の使い方もお楽しみのひとつ

なにかもの言いたげなその表情がなんとも愛らしいイボンヌは、クッキー缶やアパレルなど、さまざまな商品に展開されています。
今回、このペーパークリップになったのには、過去10回にわたって行われてきた「新東北みやげコンテスト」が深く関係していました。


写真:外箱は赤、紫、青の3種類(中身はすべて一緒です)

この「マッチ箱クリップ」を制作した株式会社佐々木印刷所(仙台市)の佐々木英明さんは、「『第10回新東北みやげコンテスト』で、歴代最優秀賞の商品展示をしあわせ乳業の社長さまがご覧になり、弊社の商品を気に入っていただいたのがきっかけです。後日、しあわせ乳業のグッズ制作担当の女性の方から連絡があり、マッチ箱クリップの制作依頼が来ました。それが、2024年4月のことです」と教えてくれました。


写真:気になるページのブックマークにも

商品開発について苦心したことについて伺うと、「私どもはイボンヌの世界観がわからなかったので、クッキーなどの商品を買ってみたり、東急ハンズで開催されていたイボンヌのポップアップショップなど拝見したりしながら制作を進めてまいりました」と、佐々木さん。

岩手出身の佐々木さんの奥さまも喜んでいたそうで、「とてもかわいいキャラクター、お菓子と一緒に購入していたけたら幸いです」と笑顔で語ってくれました。


写真:手帳のデコレーションにも

このイボンヌのかわいらしいペーパークリップは、仙台市内では、藤崎近くに店舗を構える「パティスリーレドシェーブル 仙台店」で購入可能です。
読みかけの本のブックマークや、スケジュール帳のデコレーションなどに活用してみてくださいね!

株式会社佐々木印刷所

所在地 〒983-0035 仙台市宮城野区日の出町2丁目2番16号
TEL:022-236-1281  FAX:022-236-1284
URL http://www.sasaki-print.com/

パティスリー レ・ド・シェーブル 仙台店

所在地 〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町3丁目1−12
TEL 022-281-8308
URL https://yagimilk.jp/

Koquela
ベビーかぶと

Koquelaは、仙台市産業振興事業団が主催する
第10回新東北みやげコンテストの受賞企業です。

優秀賞 ベビーかぶと

すやすやと眠るような愛らしい表情で、見る人、手にする人をトリコにする、えじこ型のこけし「ベビーかぶと」。えじことは、漢字で嬰児籠と書くもので、赤ちゃんが出歩かないようにいれておく道具のこと。稲わらなどでつくられていることが一般的で、普段は家の中で使用されていましたが、農業の繁忙期には、田んぼや畑のそばにも置かれていたそう。赤ちゃんが、えじこに入った様子を表現しているのが、えじこ型こけしなのです。

この商品をプロデュースしたのは、仙台を拠点とするKoquela。代表の金盛友実さんは、京都芸術大学で伝統工芸を学び、在学中に始めた「こだまプロジェクト」で、東北各地の工人を訪ね歩きその情報をInstagramで発信する活動を始めました。そんな活動の中で出会ったのが、大堀相馬焼の職人である錨屋窯13代目・山田慎一さん。


写真:「ベビーかぶと」のプロデュースを手掛けたKoquelaの金盛友実さん

「大堀相馬焼は、浪江町で350年の歴史を持つ伝統的工芸品です。浪江町は、東日本大震災で避難地区になってしまったために、福島県内の各地に場所を移しましたが、20数軒あった窯元は半数にまで減ってしまったそうです。そういうお話を伺う中で、大堀相馬焼に描かれている馬は、『左馬・走り駒』などとよばれ、右に出るものはいないという意味を持つということを教えていただきました。その昔、幾度となく他藩に責められる中、農耕馬で立ち向かい、一度も領土を奪われることがなかったという歴史を知り、地域の文化が詰まったこの左馬にとても魅力を感じたんです」と、金盛さんは話します。


写真:大堀相馬焼の職人である錨屋窯13代目・山田慎一さんと奥さまの苗美さん

それから時を重ね、大学卒業後にKoquelaを立ち上げた金盛さん。

「東北の伝統工芸をもっと多くの人に知ってもらい、東北を知って、見て、来てほしい」、そんな思いから、東北各地のこけしの卸販売のほか、こけし工人との協働でオリジナルの商品を生み出していきます。

「五月人形をつくりたいなと思ったときに、赤ちゃんをかごの中に入れていた『えじこ』がいいなと思いました。東北の農民のお母さんたちが農作業中に赤ちゃんをかごの中に入れていたことからうまれたえじこ型でつくりたかった。いろいろ思案する中で、『やっぱり男の子はたくましく育ってほしいよね』ということで、験担ぎにもなるし『右に出る者はいない』の左馬を描いたらどうだろう、と思い、大堀相馬焼の山田さんにお声がけさせていただいたんです」。


写真:すやすやと眠る姿が愛らしい「ベビーかぶと」

こけしを制作したのは、弥次郎系こけし工人の髙橋博斗さん。

「髙橋さんは、Koquelaの最初の商品である『正月こけし』もつくっていただいた、本当に技術力の高い技巧派の工人さん。人間の赤ちゃんのとてもかわいらしいデザインに仕上げていただきました。この髙橋さんのつくったこけしに山田さんが馬の絵を描いてくださったのですが、山田さんも『木に描くことはあまりないから、楽しい』とおっしゃってくださいました。大堀相馬焼とこけしがコラボしたのは、これまでにないことですし、それぞれのファンの方にそれぞれの文化を伝えるきっかけをつくれたのかな、と思います」。


写真:「ベビーかぶと」は、左馬だけでなく五月の節句に欠かせない「菖蒲」が描かれたものも

これらのかわいらしい「ベビーかぶと」は、第10回新東北みやげコンテストで優秀賞を受賞。金盛さんは「とても驚きました。私は、大学で伝統工芸を学び、論文も書いているので、つくるのであれば伝統工芸のよさや歴史を見せた形のデザインにしたいと思っていました。こうしたコンテストは新しいものでないと出品が難しいのではないかと思うのですが、この『ベビーかぶと』や『正月こけし』(※)は、その奥にある伝統こけしや相馬焼の背景とかも評価していただけたのだと思います。このような形で、東北地域に関われていることがとてもうれしいです」と笑顔をのぞかせました。


※正月こけしは、金盛さんの卒業論文とともに提出された鏡餅を模したこけし。紆余曲折を経て、髙橋博斗工人(弥次郎系)と佐藤英裕工人(遠刈田系)の手によって、制作販売に至りました。第9回新東北みやげコンテスト入賞。このこけしの誕生ものがたりは、Yahoo!ニュースで!

Koquelaは、仙台市産業振興事業団の後押しで、2024年8月には台南市で開催された「Creative Expo Taiwan」に出展し、多くの台湾の方たちに東北が生んだクラフトであるこけしを見て、楽しんでいただくことができました。さらに2024年9月に東京で行われた「インターナショナル・ギフト・ショー」にも出展し、多くのバイヤーの関心を引いていました。


写真:台南市で行われた「Creative Expo Taiwan」での展示の様子

「事業団さんのおかげでマーケティングについていろいろ知ることができて勉強になっています」。


写真:オリジナル商品だけでなく、伝統こけしを日本全国そして世界に広げる活動を行っています

(注:写真の「ベビーかぶと」以外のこけしは、ライター私物です)

こけしの魅力を日本全国、世界へ。そして、仙台、東北へと人の流れをつくっていく―。Koquelaの挑戦はまだまだ続きます。

Koquela代表の金盛さんのものがたりは、Yahoo!ニュースでもご紹介しています。ぜひご覧ください。

取材/2024年9月