株式会社武田の笹かまぼこ
「Canささ 笹かまアヒージョ」

2020年12月28日

株式会社武田の笹かまぼこは、仙台市産業振興事業団が主催する
「新東北みやげコンテスト」の受賞企業です。
第7回 「Canささ 笹かまアヒージョ」最優秀賞



第7回「新東北みやげコンテスト」で最優秀賞を受賞した、武田の笹かまぼこの「Canささ」。この商品が生まれた背景には、2011年に起こった東日本大震災が大きく関係していました。


武田の笹かまぼこが本社と工場を構えるのは、塩竃市。津波による大きな被害を受けた場所です。当時、営業部長の役職に就いていた現・代表取締役社長の武田武士さんは「弊社は鉄筋の3階建てということで、3月いっぱい一次避難所になっていました。そのときに、笹かまを提供させていただいたのですが、笹かまは真空パックでも賞味期限が3週間から1か月なんですね。いつまでこういう状況が続くかわからない中、日持ちのするものを用意しなければならない、と思ったんです」。


当初武田さんは、笹かまをそのまま缶詰にしようと試みたそう。「でも、技術的に難しい上、品質が担保されていなくて…。それで、発想の転換をしようと思いました。一般的に笹かまは、おやつや日本酒に合わせて食べられています。そこで、違う需要を作り出そうと考えたんです」。
武田さんがアドバイスを求めたのは、日本屈指の温泉地である秋保に2015年にオープンした「秋保ワイナリー」でした。「笹かまも基本的にはスケソウダラのすり身なので、白ワインに合うのではないかと思って。それで、ビジネススクールで知り合った秋保ワイナリーさんに相談してみたんです。アヒージョが一般的になってきていたこともあって、笹かまをアヒージョにしてみたいんだけれど、どうだろう?と」。

写真:日本屈指の温泉地・秋保にある「秋保ワイナリー」。ワインの醸造だけでなく、次世代の担い手の育成も行っています


缶詰への加工には、石巻市の「株式会社木の屋石巻水産」の協力を仰ぎました。「東京ビッグサイトの展示会で一緒になって、『笹かまでアヒージョをやってみたい』と話しました。早速協力してくださったのですが、そのままオイルと混ぜてもおいしくない。ああ、もうこれは、ダメかな…と、やもすれば諦めるところだったのですが、粘りました(笑)。木の屋さんには、圧力のかけ方とかオイルの配合とか工夫していただいて、秋保ワイナリーさんには、ワインの新商品の発表の時にいろいろな飲食店のマスターとかソムリエさんを呼んでくださって、うちの試作品を出してくれたんです。そこで、食のプロたちからいろいろなアドバイスをいただきました。そこから、笹かまの焼き色や柔らかさの調整をして、こういうものに仕上がったんです」。

写真:黄金色のオリーブオイルの中に浮かぶ、5枚の笹かまとマッシュルーム、ガーリック、そして鷹の爪。缶を開けた瞬間、食欲をそそるいい香りが立ち込めます


「この『Canささ』は、食材を混ぜて、はいできあがりと模倣できるものでは決してありません。調整が本当に難しいし、震災で被災した木の屋さん、震災の後に想いを持って立ち上がった秋保ワイナリーさん、そして弊社と、3社が協力してできたもの。これは、ほかのところでは決してできなかった商品だと自負しています」。

写真:予想以上のヒット商品となった「Canささ」。武田の笹かまぼこ本社売店にて


これまでにありそうでなかった「笹かまのアヒージョ」は、瞬く間にヒット商品に。「どんな味かわからないから買ってみようというニーズはあるだろうし、食べていただければきっとリピートしていただけるという自信はありました。ところが、最初から複数缶買うのが当たり前…という感じになりまして。実はリスクを小さく見て、数千缶を半年で捌ければいいな…と思っていたのですが、それがあっという間になくなってしまった。1か月で10倍の売り上げになったんです」と、予想以上の売り上げに武田さんも従業員のみなさんも驚きを隠せなかったそう。

写真:「Canささ」は、秋保ワイナリーの「甲州シュールリー」との相性が抜群!


さらに、この「Canささ」のヒットには、うれしい副産物も。「『Canささ』が美味い、ほかのものも食べてみよう、という地元の食を見直すきっかけになったようです。それが、何よりもうれしいですね」。

写真:「社員は家族」と話す武田さんと従業員のみなさん。「創業者パワーがあれば俺についてこい!かもしれないけれど、私は『足りないところの力を貸してください』というスタンスです」と
*写真撮影時のみマスクを取り外していただきました


武田の笹かまぼこの経営理念は「私たちはもう一度会いたくなる感動の物づくりをします」。まさに、その通りの商品づくりができたその背景には、新型コロナウィルスの影響もあったのだといいます。「零細企業では、日々のルーティンに追われがちです。このコロナの中で、たっぷりと考える時間があったこと。そして、既存の事業が復活しないことを前提に新しい事業を立ち上げないと立ち行かないと考えたことが背中を押しました」。

写真:本社では工場見学も。丁寧な仕事の様子を見ることができます


観光バスの立ち寄り先となり、年間7~8万人の来場者がある武田の笹かまぼこ。本社での物販やレストランでの売り上げが全体の半分以上、その残りが駅や高速道路などでの外販であったため、4,5月の売り上げはかなり厳しいものがあったそうです。「6月に入って、土日祝は開けたけどそれでも全然で。観光に左右されない事業のポートフォリオを取っていくことが大事だと気付いたんです」。

写真:今も石臼でかまぼこを練っているという武田の笹かまぼこ。丁寧な手仕事がおいしさの秘密です


被災して日持ちのするものを作りたいと願ったあの日から、足掛け10年。すべてが導かれているようにこの「Canささ」は生まれました。
「5年後10年後のライフスタイルを見据え、商品だけでなく、シーンを創造していくのが重要だと考えています。そして、この塩竃にうちがある意味をもっと大切にしたいです。うちの商品、事業に共感いただいて、塩竃、宮城が元気にならないと」。

写真:本社売店の武田さんセレクトコーナー。「実際に私もここで買っています」と、武田さん


写真:「Canささ」をそのままパスタと絡めれば、絶品のペペロンチーノに


写真:「Canささ」アレンジメニューの「笹かまチャウダー」。カットした玉ねぎとにんじんをたっぷりのバターで炒めて、小麦粉を適量加え、牛乳で少しずつ伸ばしていきます。「Canささ」の笹かまは一口大にカットして、マッシュルーム、にんにくもイン。器に盛り付けたら、缶に残ったオリーブオイルを回しかけます。寒い時期に体の芯から温まるごちそうのできあがり!


写真:武田の笹かまぼこの人気メニュー「ミニささかま」。ちょっとしたおつまみに最高!


写真:スイーツ感覚で食べられる「ゆずささ」。デザインもかわいらしく、お遣い物にもぴったり


写真:まるで信玄餅のようなかわいらしいパッケージが目を引くデザインのものも


写真:このメタリックな袋は、保冷バッグ仕様。このアイディアが旅行客に好評で、売り上げも好調なのだとか


そして「今回はアヒージョでしたが、第二弾、第三弾と考えていけたら…と思っています。赤ワインとかウイスキーに合うようなものとか、ちょっと尖ったターゲティングをしていきたいですね」。

武田さんのもと、この先どのような商品が生まれていくのか。楽しみです。

商品の詳細はコチラ


株式会社武田の笹かまぼこ

所在地 〒985-0016 宮城県塩竈市港町2丁目15−31
TEL 022-366-3355
営業時間 9:00-16:00
URL https://www.takesasa.co.jp/
販売サイト https://item.rakuten.co.jp/takesasa/001_043/

取材日/2020年12月



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