よいみせ│珈琲まめ坊

仙台市青葉区米ケ袋。ここに、豊かな緑に囲まれ、広瀬川を眼下に臨むコーヒー専門店があります。その名は「珈琲まめ坊」。2009年10月10日にオープンし、今年で15周年を迎えます。

オーナーの青木まさ江さんは、好きが高じて自分のお店を開業するに至ったという筋金入りのコーヒー好き。

「もともとコーヒーは大好きで、『自分の家でもおいしく淹れられたらいいな』と思って、思いつく限りのコーヒーの淹れ方教室に参加しまくりました。そうするうちに、淹れ方だけではおいしいコーヒーは飲めないということに気づいたんです。豆が大事!そして、私がおいしいと思うコーヒー屋さんには、コーノ式という円錐形のフィルターを使っているという共通項があることがわかったんです。なので、以来ずっと円錐形のドリッパーで珈琲を淹れています。更に、尊敬する先生のもとで勉強させていただくうちに、『私、コーヒー屋になりたい』という思いがふつふつと芽生えてきました。そのうちに先生に『やったら?』と言われて…」


写真:オーダーを受けてから自家焙煎の豆を挽き、1杯1杯丁寧に淹れてくれます

10年ほど東京に通い、「自分のお店を開きたい!」という思いを募らせていった青木さんの背中を押した先生の一言。

「ただ私はコーヒーのプロではあるけれど、起業については何も知らなくて。それでインターネットで見つけた仙台市産業振興事業団に相談してみることにしました。起業セミナーに参加したり、マーケッターの先生方からのアドバイスをいただいたりして、本当に助かりました。プロの力を借りることは本当に大切ですね」


写真:「サントスの緑風」を堤焼の器で。爽やかな味わいに感動!

こうして、念願のお店をオープンした青木さん。取り扱うのは、厳しい国際基準で品質を高く評価されたスペシャルティコーヒーと手づくりのスイーツです。

「私が信頼している生産者さんのコーヒーを扱っています。これまでに8ヵ国を訪問して生産者さんとの信頼関係を深めてきました。先日はブラジルを訪問してきたので、サントス港をイメージした『サントスの緑風』を季節のブレンドとしてご提供しています」

「サントスの緑風」の爽やかですっきりした味わいは、初夏にぴったり。一口含めば、スッと肩の力が抜けていく感覚を覚えることでしょう。


写真:夏日となった取材当日。取材班に青木さんがふるまってくれたアイスコーヒー(*)は格別のおいしさでした
*通常お客さまへご提供するアイスコーヒーは、グラスになります

「珈琲まめ坊」の大きな魅力のひとつでもあるロケーションは、青木さんのこだわり。
「仙台でコーヒー屋をやるなら、絶対に広瀬川沿いがよかったんです。それで実際に歩いてみて探すうちに、ご縁があってこの場所に決まりました」
最初は起業セミナーなどで知り合った人たちや地元の友達、店の前を通りかかる人たちがお客さまとして来店してくれたそうで、「今考えると恐ろしいんですけれど、告知を一切しなかったんです。今みたいにSNS等もなかったですし」と、青木さんは笑います。


写真:豆の販売もしています。オリジナルブレンドのドリップバッグもあるので、自宅でも「珈琲まめ坊」のコーヒーを楽しんでみては?

震災やコロナ禍を経て、15周年を迎える「珈琲まめ坊」。今後のビジョンを青木さんに伺いました。
「コーヒーが好きな方はもちろんなんですけれども、ここに来て『なんか今日もがんばったな』みたいな感じでホっとできるお店にしたいなと思います」

定番から季節限定商品まで、常時20種類程用意している「珈琲まめ坊」のラインナップ。地元陶芸作家さんの作品など青木さんセレクトの器でいただくコーヒーと、季節ごとに移りゆく表情を見せてくれる窓からの景色をぜひ楽しんでみてください。

珈琲まめ坊

所在地 〒980-0813 宮城県仙台市青葉区米ケ袋1-1-12
TEL 022-738-8066
営業時間:12:00-19:00
定休日:木曜日(祝日の場合は営業)

取材/2024年6月

よいみせ│Petit une feuille(プティアンフィユ)

仙台駅からJR仙石線でわずか一駅の榴ヶ岡駅。その近くに店舗を構えているのが、ヴィーガンスイーツ専門店の「Petit une feuille(プティアンフィユ)」です。


写真:オーナーパティシエ本郷さんのセンスが光るスイーツがショーケースに並びます

仙台でも珍しいヴィーガンスイーツのお店。

オーナーパティシエの本郷小百合さんは「私、19年間お菓子づくりの先生をしてきて、甘いものが大好きなんです。でも、お医者さまから『甘いものをこのまま続けて食べていたらダメだよ』といわれて、『何かないかな』と探して出合ったのがヴィーガンスイーツでした。そのころはまだヴィーガンってあまり知られていなかったんですけれど、本で調べて自分でつくってみたんです。でも、今までバターたっぷり生クリームたっぷりのケーキばかり食べていたからあまりおいしいと思えなかった。ただ、ちょうどそのころからヴィーガンのお店も見かけるようになってきて、東京にはスイーツのお店もできて。それでそこに行って食べてみて、自分でも研究を重ねました。もともと私自身野菜中心の食生活でお肉や魚はほんの少しあればいいという感じだったので、工夫するのは楽しかったですね」と話してくれました。


写真:スコーン(プレーン)は、朝食メニューにもぴったり

生クリームの代わりには豆腐、バターの代わりに植物油、牛乳やヨーグルトの代わりにには豆乳などを使用していますが、本郷さんのつくるケーキやスコーン、マフィンなどはそのすべてが甘さ控えめで「これが本当にヴィーガンなの?」と思うほどに美味。定番のキャロットケーキのクリームは豆腐、生地にはスパイスも効いていて、甘いものが苦手な方でもペロリと食べられます。もう一つの人気定番メニューのソイチーズケーキは、豆乳ヨーグルトでつくった一品で隠し味に味噌を加えています。これもあっさりとした味わいで、朝食にもぴったり。そのほかにも見た目にもかわいらしい季節のフルーツタルトは、お遣物にも喜ばれること間違いなしです。

「私自身の健康を考えてつくったギルティ―フリー(*)なスイーツなので、いろいろな方に召し上がっていただきたいです」と本郷さん。

*ギルティ―フリー=罪の意識を持たずに済むこと


写真:Petit une feuilleのInstagram。美しいスイーツの写真が並びます

現在、Instagramで店舗や商品の情報発信をしている本郷さん。その写真の美しさは必見です。「もともとパソコンも何もしてこなかったから大変で…」と本郷さんは苦笑しますが、これがご縁で同じく榴岡に店舗を構えるレストラン「47ag」でデザートとして提供されることにもなりました。

今年5月23日で、オープンから丸一年を迎えた「Petit une feuille」。

本郷さんは「これからはオンラインにも取り組んで、焼き菓子なんかの販売を始めたいなと考えています。あと、そんなに簡単ではないとは思っていますが、いずれは人を増やしていくことも考えたいですね」と話してくれました。



見た目に美しく、食べておいしい本郷さんのヴィーガンスイーツ。

百聞は“一食”にしかず。ぜひ、味わってみてはいかがでしょうか。

Petit une feuilleのオーナーパティシエ、本郷小百合さんの
「開業者インタビュー/アシ☆スタ」はコチラからどうぞ。

Petit une feuille

所在地 仙台市宮城野区榴岡5丁目2-14 エルドール榴岡1F
(仙台サンプラザ西側駐車場入口を背に右斜め前)

定休日:月・木・隔週日曜日(変更有り)
営業時間:12:00~なくなり次第終了

プティアンフィユ

取材/2024年5月

雑貨のはなし│AITTA

美しき着物の世界を仙台から発信―AITTA―

ヴィンテージの着物や帯をはじめとする日本の伝統的な織物に新たな息吹を吹き込むAITTA。

2014年に誕生したこのブランドは、間もなく10年を迎えます。

代表の高嶋マチ子さんは、「私は30歳から着付けの仕事に従事してきました。その中で、お母さまやおばあさまから受け継いだ着物を持て余している方が多く、悩んでいるということを痛感してきました。また、私自身祖母が他界した際たくさんの着物を遺してくれたのですが、『これを活かさなくては!』と強く思い、着物が衰退する一方でどうにか多くの方に着物を日常的に楽しんでいただく方法はないかと考えました。それがAITTAを立ち上げたきっかけです」と話します。

子どもの頃から着物に親しんできたとはいえ、洋裁の経験はゼロだったという高嶋さん。
「洋裁もデザインも本格的に学んだことはありませんでしたが、人とちょっと違うオシャレが好きでした。幸運なことに、着物を洋服に仕立て直し活かしたいという漠然な想いに応えてくれる腕の良い服作りのプロたちと巡り合うことができ、スタートさせることが叶いました。最初はお客さまのお宅へ伺い、お持ちの着物を見せて頂いた上で『こういったものはいかがでしょうか』と提案するようなセミオーダーメイドでお洋服を仕立てていたんです」


写真:大島紬からできたコート

着物からお客さまのイメージに合った洋服を丁寧に仕立てる…。そんなAITTAの手しごとにピンチが訪れたのは、2020年のこと。

「コロナの影響と母の介護で、今まで続けて来たことが全てできなくなってしまいました。それで、初めて(仙台市産業振興)事業団さんに相談して、『ホームページの再構築やオリジナル商品をつくり、海外へのアプローチやオンラインでの販売をしましょう』というアドバイスを頂きました」

それをきっかけに「海外進出支援企業である仙台箪笥の老舗ブランド、門間箪笥店さんに橋渡しをしていただき、OBIランナーを香港にてテスト販売することに。

アジア圏の富裕層をターゲットに、仙台箪笥や工芸品と共に着物の帯を使ったテーブルランナーをご提案していただくために託しました。

現地の方の反応や好み・要望のリサーチ、輸出や翻訳の面で協力を得られ、極力負担の少ない形で海外へのアプローチができることを実感。

今後はラグジュアリーな着物服の販売を視野に、台湾・香港・シンガポールなどのアジア諸国へアピールしていくつもりです」


写真:リバーシブルのジャケットは、AITTAのセンスが光る逸品。男性だけでなく、女性もカッコよく着こなせます

そして、その頃に偶然出会ったのが、アパレルブランドの量産商品の設計から生産までを担うOEMを生業としている現スタッフ。高嶋さんのビジネスに新たなきっかけを与えてくれました。それまでオーダーメイドだけだったAITTAにレディメイド(既製服)がラインナップされたのです。


写真:着物の裏地を裂いて編んだセーター

「私が培ってきた仕立て服のノウハウと、縫製工場で生産する製品づくりを掛け合わせて、オーダーメイド服と既製服の両立をはかれています」

洋服地のみを手掛けてきたスタッフにとっては、ほぼ初めて手に取る和服地。

スタッフ曰く、「日本が生み出した和服地というものはこんなに美しいんだ!と感動するのと同時に、生地幅が狭いため型紙づくりが全く異なる上、主な素材もシルクなので、お互いの経験を結びつけるまでに四苦八苦した」そう。

高嶋さんがやってきた仕立て服の仕事と、縫製工場で生産される工業製品の仕事は少なからずかけ離れた工程の差がありました。

「私は洋裁技術に関する知識が乏しいので、『ここをこうしたい』とデザイン先行で話をするので…」と苦笑しながらも、「ものづくりの奥行きを理解し、製品毎に見合ったつくり方を選択すること。そこでまたひとつ学びを得ました」と、話します。


写真:佐野地織でつくった名刺入れ。味があります

最近では、宮城県南部にある丸森町の伝統工芸である佐野地織を使用した商品も展開しているAITTA。
今後、目指す先について伺いました。
「着物地をはじめとする日本の織物の素晴らしさを、もっともっと多くの方に知ってもらいたいというのが私たちの願いです。日本国内の方々はもとより、海外のお客さまにも手に取っていただいて、日本の布の可能性を感じていただけたら」と、高嶋さん。

AITTAの商品は現在、青葉区錦町にある「木香テラス」内の「GALLERY Meguru」で購入することが可能です。
洗練された着物服や小物にぜひふれてみてはいかがでしょうか?

AITTA(GALLERY Meguru)

所在地 981-0952 仙台市青葉区錦町1−13−7 長刀丁アネックス1F 木香テラス(モッコウテラス)
営業 木・金・土曜日 11:00〜17:00
URL https://aitta.jp/

雑貨のはなし│旅する obico

旅する obico


着物の帯をアップサイクルして、バッグやインテリアとして新たな息吹を吹き込んでいる仙台のブランドobico。2022年のブランド立ち上げ以来、さまざまな商品の発案、製造、販売を行ってきました。

そのobicoの2024年は「旅するobico」がテーマ。これまで以上に日本らしさを追い求め、デザイン性と機能性を兼ね備え、旅に連れて行きたくなるような商品を目指しています。

そのひとつとして誕生したのが、このボディバッグ。両手が使え、バッグを身体の前に持つことができるので、旅行の時に重宝します。また、日常のカジュアルなシーンにもスタイルと気品を与えてくれるでしょう。

2024年5月14日までは、仙台空港2階コンコースにてポップアップショップも開催し、このボディバッグのほか、新作の「プラチナセレクション」なども販売中。また、国際線免税店では、常設で商品を販売していますので、仙台空港から海外にお出かけされる方は、ぜひ立ち寄ってみてくださいね!

よいみせ│itoshigoto

広瀬川沿いに広がり、おしゃれなカフェや飲食店なども軒を連ねる仙台の人気エリア・米ヶ袋。その一角の雑居ビルの2Fにある毛糸専門店が「itoshigoto」です。
オーナーの小山未紗さんが2020年にオープンし、輸入した毛糸のほか、ご自身で染めた毛糸や手編みの靴下や子供服なども販売しています。


写真:カラフルな毛糸が壁面にずらりと並びます

小山さんは「東京に住んでいたころから、毛糸を染めてマルシェに出したりオンラインで販売したりしていたんです。仙台出身なので、いずれは仙台に帰りたい、お店を持ちたいなという思いがありました。コロナが自分の生き方を見直すきっかけになって、ちょうどそのころ仙台の大きな毛糸屋さんが閉店するというので、私が帰って毛糸屋さんをやろうと思ったんです」と話します。
小山さんが編み物をするきっかけとなったのは、その家庭環境にありました。


写真:小山さんが編んだ靴下。お店で販売しています

「私の母も編み物をしていましたし、祖母の妹がかなり編み物をする人だったので、その影響が大きいですかね。でも、私が本格的に編み物にハマったのは、フィンランドに留学していたときなんです。フィンランドの冬は寒くて夜が長い。だから、フィンランドの人って男女関係なく編み物をする人が結構いて。普通にスーパーに毛糸が置いてあるくらい、生活になじんでいるんです。それで私も編むようになって。最初につくったのは、スヌードでした。寒いからつくってすぐに活用できて楽しくなっちゃって。それでどんどんエスカレートしていった感じです(笑)」。
帰国後、小山さんはSNSで海外の人たちが自分で毛糸を染める様子をみて、自身でも毛糸を染めるようになったのだそう。


写真:好きなものに囲まれて仕事をしている小山さんは、とてもいきいきとしています

「キッチンで簡単に染められるんです。自分の欲しい色にできるし、小ロットなのでお客さまの反応をみながらできるのもいいですね。特にテーマは決めてはいないのですが、今だと春っぽい色が並んでいて、秋になるとこっくりした色が増えて…という感じにはなりますね」。
店内には古い編み機なども並び、「この編み機でいろいろつくったりしているんです。現役なんですよ」と、小山さんが楽しみながら商いを続けている様子がうかがえます。


写真:さまざまな素材、色、太さの毛糸が並んでいて、見ているだけでも楽しい

「将来的には、お店と家を一緒にしたいなって思っていて。私の祖父母が呉服店を営んでいたのですが、1階がお店で2階が家…みたいなのがずっと理想で。あとは、刺し子の糸を染めている人とか布屋さんとか、ボタン屋さんとか、個人でやっている手芸周りの人で集まって何か大きい手芸屋さんみたいな感じで一緒にできたら楽しいなとも考えています」。
小さいながらも、楽しくてあたたかな小山さんの店「itoshigoto」。編み物教室なども開催しているので、興味はあるけど未経験…という方も、気軽に訪ねてみてはいかがでしょうか。

itoshigoto

取材/2024年4月