合資会社羽場こうじ店
「くらをの米麹茶 缶詰め」
合資会社羽場こうじ店は仙台市産業振興事業団が主催する、新東北みやげコンテスト受賞企業です。
第5回「くらをの米麹茶 缶詰め」優秀賞受賞
※現在、パッケージ・商品名をリニューアルして販売中!
※現在、パッケージ・商品名をリニューアルして販売中!
写真:歴史ある酒蔵を改装してオープンした「旬菜みそ茶屋 くらを」。「勇駒」の看板が往時を偲ばせます
秋田県横手市。かまくらで有名な、雪深いこの土地で100年以上にわたって麹屋を営んでいるのが「合資会社羽場こうじ店」です。
この羽場こうじ店に生まれ育ち、現在市内中心部の増田町で「旬菜みそ茶屋 くらを」を営む鈴木百合子さんを訪ねました。「くらを」は、麹の食文化を広く伝えようと鈴木さんが2013年にオープンさせた食堂。併設されたショップでは、羽場こうじ店の麹のほか、この麹を使用した味噌などを販売しています。
情緒ある増田の通りにあって、ひときわ趣のある「くらを」。鈴木さんは、「この建物は、もとは江戸時代からお酒を造っていた酒蔵だったんです。平成15年に商いを閉じてしまったのですけれど、国の指定を受けている蔵が中にあるがために建物を取り壊すことができなくて。『誰か管理維持できないか』という話をいただいて、実家の麹屋で引き取らせていただいたんですよ」と、話します。
写真:「くらを」では、日替わりの定食のほか、甘酒や米麹茶の提供も行っています。増田町の蔵のある町並みを訪れたら、ぜひ「くらを」でランチ&ティータイムを楽しんでは
「くらを」で提供するのは、どこか懐かしい感じの食事。「都会の人たちには想像できないくらい、ここではお米を食べるんです。米中心の食文化だから、麹屋も珍しくない。横手って、人口が10万人いないのに、麹屋は23軒もあるの。今、日本中で発酵食品ブームだけど、横手ではずっとずっと昔から家庭に麹があって、発酵食品を食べる文化があったんです。だから、増田町で何をしたらいいだろう・・・って考えたときに、これだ!って思って。うちの商売をお伝えするのにいいと思ってここを始めたんです」と、とても楽しそうに話します。
写真:“女性が憧れる女性”といった感じの鈴木さん。都会からやってきたお客さんの人生相談に乗ることも度々あるとか
まさに秋田美人といった色白の肌に、つややかな輝き。鈴木さんの肌を見れば、麹の健康効果は一目瞭然。「見せられないのが残念だけど、私の腸って絶対きれいだと思う(笑)。一緒に働いている食堂のお母さんたちは、若くても60歳くらいなんだけど、本当、みなさんに彼女たちの肌を見てほしい。普段の食生活の結果がこうなんだから!って自慢したくてしょうがないの(笑)」。
麹のある生活を、多くの人に伝えたい-。常日ごろからそう考えている鈴木さんは、ある日、「麹そのものの抗酸化作用は過熱に耐えうる」という、専門家が寄せた一文を目にし、麹を乾煎りにしてみることに。「カラメルのような甘くて香ばしい香りがしてね。うわ、これはおいしそう・・・と思ってかじったら、固い(笑)。ポンポン菓子のようにはいかないか。じゃあ、水をかけたら戻るかな・・・って水をかけたら茶色い液体が出てきて。それを飲んでみたら、甘くておいしい!って(笑)」。これが、「くらをの米麹茶」の誕生の瞬間。「棚からぼた餅みたいな話でしょう」、そういって鈴木さんは豪快に笑います。
写真:「くらを」では、店頭で米麹茶を提供。ほっとした時間を過ごすことができます
出来上がった米麹茶を専門家に分析してもらったところ、「『麹の健康要素はないので健康茶ではないが、香りを楽しんでリラックスするためであればお茶といってもいいのでは』と言っていただいて。手間がかかるからビジネスにならないという人もいたけれど、それでもいいの。お茶にすることでとっかかりになってくれたらうれしいから」。ノンカフェインでシュガーレスなのにほんのり甘く、やさしい味わい。小さな子どもからお年寄りまで、楽しめるおいしいお茶の完成です。
写真:麹を丁寧にほぐしてから焙煎します。すべて手作業なので、大量生産をすることができません
自らの手で焙煎も行うため、一度にできる米麹茶の量はわずか。そのうえ「麹そのものが、ひいじいちゃんの製法で今もやっていて、機械で作るんじゃないの。だから一度で最高に作れて500kg。その中からこちらに譲ってもらえる量が少ないのと、焙煎に時間がかかるので大量生産できない。それに、原料の麹の出来も一定じゃないんです。生き物ですから。それを見極めるためにも、機械を使わずに自分の目で確かめながらじゃないと・・・」と、職人気質をのぞかせます。
写真:米麹茶は、普通のお茶のようにお湯で淹れても水出しでもおいしくいただけます。ほのかに甘い、やさしい味わいのお茶です
そして、「今の人たちって、疲れているでしょう。だからせめて一日に一回くらい、このお茶でホッとしてほしいなって思うんです」と、このお茶に寄せる期待を明かしてくれました。
写真:米麹茶にオレンジ、レモン、ミントなどを入れてフルーツフレーバーティーに。すっきりしていて、本当に美味!
ところで、「くらをの米麹茶」は、パッケージデザイン隆盛の昨今においては、驚くほどシンプル。「ベルリンに住んでる日本人の方がデザインしてくれたんです。いつもうちのことを気にかけてくださる方でね。私、このお茶が空港とかのお土産コーナーに置かれているのを想像したのね。あそこにガチャガチャしたデザインのものがあっても目立たないでしょう。だから、とにかく引き算でやろうということになって。それで、どうせだったら秋田の雪の色にしようって。実際に、サンプルを雪の上に置いてみて『まだ黄色い!』とかやって(笑)」。
写真:ドイツ在住のデザイナーがデザインしたパッケージ。潔いほどシンプルなデザインが目を引きます
パワフルで美しい鈴木さんに、今後の目標を伺いました。すると「麹屋に生まれて、この地域で育っていて、今は先輩方と一緒に働いていて学びがある。昔は日本のどこにもあった食文化がたまたま横手に残っていて、今ここって特別な場所になってるのね。だから、私はこの場所から、“かつて日本にあった食べ方の文化”を残していくのが義務だと思っているんです。麹の力を感じた自分が伝えられることがあると思うから、脈々とつながれてきた麹の力を活かした、それでいて現代の食卓にあった食べ方の提案をしていきたい。それはレシピ集だったり、教室だったり、イベントだったり・・・。いろいろな形でね」。
写真:これからも増田町から「麹のある生活」を発信し続けていく、という鈴木さん。次なるチャレンジが楽しみです
鈴木さんのミッションは、まだまだ道半ば。これからどんなことを仕掛けてくるのか、楽しみで仕方ありません。
合資会社羽場こうじ店
(旬菜みそ茶屋くらを)
〒019-0713 秋田県横手市増田町三又字羽場72
TEL:0182-45-3710 FAX:0182-45-3711
URL:https://kurawo.net/contents/
営業日 日~火・金・土
営業時間 10:00~16:00
ランチタイム 11:30~14:00
定休日 毎週水・木
撮影/堀田 祐介
東北大学法学部卒業後、仙台市内の商業写真撮影会社に就職。写真の道に進む。アシスタントを経てカメラマンとなり、物撮、人物撮影など、写真全般にわたり様々な仕事をこなしながら10年勤務。その後準備期間を経て独立、現在はフリーランスとして、プロバスケットボール・仙台89ERSオフィシャル(初年度から現在まで。来季で15季目)のほか、雑誌媒体の取材(街ナビプレス・仙臺いろはマガジン・ウォーカー・るるぶ)、商業写真撮影、番組用写真撮影と各方面で活躍。