前編|マッチ箱マガジンで巡る仙台さんぽ(全3回)

2018年1月5日


マッチ箱仙台時間イラスト

仙台にゆかりのあるイラストレーターたちがつくり上げたマッチ箱マガジン。それは、マッチ箱に入った小さなガイドブック。今回は佐藤ジュンコさんが手がけた「仙台時間(21時~24時)」を片手に、おいしいお酒が楽しめるお店を巡りながら夜の仙台を散歩します。

|鳥平

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「このお店はおだやかに楽しんで帰れるお店。ご年配の常連さんが多く、仲良くなれると嬉しい」とジュンコさん。

まずは、昭和の香りが残る焼き鳥店「鳥平(とりへい)」へ。ジュンコさんが足繁く通うこの店は、店主の十倍(とべ)渉さんをはじめ、スタッフのみなさんが家族のようにあたたかく出迎えてくれます。


|ジュンコさんが惚れ込んだ手料理の数々

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ジュンコさんの定番はサバ味噌、卵焼き、ポテトサラダ。
思わず目移りしてしまうメニューがずらり。

ジュンコ:最初にこのお店に来たのは、まだ書店で働いていた頃。焼き鳥はもちろん、卵焼きやおひたし、サバ味噌とか、家庭的な手料理が大好きです。このお店は、居酒屋と家のちょうどいい中間な感じがするんです。今ではもう、「私のホーム」ですね。あ、ビールをひとつお願いします!


|最初は謎の人物でしたね

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店主の十倍 渉さん。
雑貨のデザイナーという一面も持っている。

十倍さん:ジュンコさんがお店に来たばかりの頃、イラストレーターだってことを知らなかったんです。時々お店でノートに絵を描いているのを見かけては、「何してる人なのかなあ」って思っていたくらい。それくらい「謎の人物」でした(笑)。
ジュンコ:そういえば絵を描いているときに、「漫画家なの?」って話しかけられたこともありましたね。それがきっかけでおしゃべりをするようになって、いろんなところでお店を紹介させてもらうようになりました。


|絶品のナンコツはここだけの味わい

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「ナンコツ」(1本200円)。1日10本限定なので、確実に食べたいなら開店後すぐの来店がおすすめ。

ジュンコ:さっそく焼き鳥をいただきましょう! カリッと焼かれた「皮」も好きだけど、「ナンコツ」もおいしいですよね。どちらもこのお店でしか食べられない味と食感なんです。
十倍さん:そうそう。うちのナンコツはほかにはない食感だと思いますよ。豚1頭から2つしか取れない希少な部位を使って、仕込みに2時間かけていますからね。だから1日10本限定なんです。
ジュンコ:え! そんなに貴重だって知らないで、「わー、不思議な食感だー!」なんて思いながらたくさん食べていました。今まで食べたナンコツに詫びたくなります…(笑)。


|「じゅんこちゃん」の名でボトルキープ

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ボトルにイラストを描くジュンコさん。
焼酎のボトルが一気にポップな雰囲気に!

ジュンコ:いつもここで注文するお酒は瓶ビールか日本酒。焼酎のときはポットごとお借りして、お湯割りにして飲んでいます。友達と一緒に来ると、すぐになくなっちゃう(笑)。みんなでお湯を注ぎながら、楽しく飲むのが好きです。


|変わらないこと。そして変わっていくこと。

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「大豆ハムカツ」(540円)。大豆で作られていながら、歯ごたえや味わいはハムそのもの。

十倍さん:このお店は今年で38年目。焼き鳥のタレも38年継ぎ足して使っています。もしかすると、それを知らないで食べている人も多いかもしれないですね。
ジュンコ:秘伝のタレだから、あんなにおいしいんでしょうね。そういえば今年メニューを新しくしましたよね? まだ食べたことのないメニューがいっぱいあるなあ。
十倍さん:そうそう。(2017年)4月にメニューをリニューアルして、ベジタリアンの方や食事制限をしている方でも安心して食べられるヴィーガンメニューも加わったんです。あ、ジュンコちゃんはまだ「大豆ハムカツ」はまだ食べたことなかったよね? ぜひ食べてみてよ!
ジュンコ:これは大豆だって言われないとわからないくらいハムの食感そのものですね! おいしいなぁ。

|ジュンコさんの名店をファンも巡る!?

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「引越し先をこのお店の徒歩圏内で探したこともあるんです!」と語るほど、「鳥平愛」にあふれるジュンコさん。

十倍さん:そうそう! 今年の夏にジュンコちゃんのファンだっていう方がお店に来てくれたんですよ。3人でいらっしゃって、カウンターで飲んでいったけど、ジュンコちゃんが紹介しているお店を全部まわっているみたいだよ。
ジュンコ:え、うれしい! でも私の行きつけのお店に全部行っていたら、いつまでもキリがないかもしれないなあ(笑)。



鳥平

  • 昔懐かしい雰囲気のなか、多彩なアテとお酒を楽しめる一軒。県庁裏の立地ゆえ、サラリーマンを中心に愛され続けている。手間ひまかけた料理はもちろん、ヴィーガンメニューも好評。

  • 住所:仙台市青葉区上杉1-4-32
  • 営業時間:17:00~22:00
  • 定休日:土・日曜、祝日
  • 電話番号:022-265-9780

仙台時間_前編08




イラストレーター 佐藤ジュンコ

福島県出身、仙台市在住。書店勤務時代に不定期発行されたフリーペーパー「月 刊佐藤純子」が評判を呼びイラストレーターの道へ。マッチ箱マガジンでは「松 島」「白石」「仙台時間(21 時~24 時)」を担当。著書に「月刊佐藤純子」(2015年)、「佐藤ジュンコのひとり飯な日々(コーヒーと一冊)」(2015 年)、「仕事場のちょっと奥までよろしいですか?」(2017 年)など。

佐藤ジュンコさん_PROFILE

フリーライター 及川 恵子

1982年気仙沼生まれ。石巻育ち、仙台在住。大学で建築を学んだのち、出版社勤務を経てフリーライターへ。グルメ取材、インタビュー、レビュー、レポート、なんでもお任せあれ。知ること、書くこと、人に会うことが好きです。それと、音楽と旅と猫も好き。
mail:keikooikawa[at]me.com

及川プロフィール