新商品/新サービス開発支援
ほまれのふくろ【後編】
仙台の老舗染物店×SDGs
「袋のための手ぬぐいの物語」<後編>
創業90周年の節目に、新たなものづくりに挑戦することになったほまれや。仙台市産業振興事業団の「新商品/新サービス開発支援」を受け、サステナブルなエコバッグ「ほまれのふくろ」を製作することになりました。クリエイティブチームのサポートを受け、いよいよ製造工程に進みます-。
ほまれのふくろ【前編】はコチラ!
production 製造
ロックミシンと工業用ミシンで1枚1枚縫製◆職人技が光る繊細な手仕事
コンセプト、デザインが出来上がり、いよいよ製造工程へ。ほまれやでは、注染という手法で手ぬぐい製品を作ります。注染とは、生地に染料を「注」いで「染」める日本の伝統的な染色技法。静岡県浜松市にある協力工場で行われています。デザインを施した型に置いた生地を特殊な糊で防染し、模様部分を染め上げたら、丁寧に水洗いし、吊るして天日に干して完成。染に用いる型も、デザインによって手彫りか機械のカッティングかを変えて手作業で行われるそう。ひとつひとつの繊細な手作業によって美しい染物が出来上がります。まさに職人技!
染上がった布は、ほまれやの工場でベテランの職人が生地を一枚一枚丁寧にこちらも手作業で仕上げていきます。まずは生地をアイロンがけして整え、デザインと折を合わせてロックミシンで縫製。端処理などを施したらまたアイロンでしわを整え、ひとつひとつ折って箱に入れていきます。エコバッグのほまれのふくろには留め用のゴムの縫い付けもあるので、さらに工業用ミシンで補強縫いも。そんな気の遠くなるような工程を、ふたりの職人が1日250枚ほどのスピードで仕上げていきます。アイロン掛けひとつにも技術があり、ただしわを伸ばすのではなく、程よい力加減で全てを同じ大きさに整えて行くのだとか。
アイロン掛けにも職人技が光る
▼ほまれや 土田さん
「ほまれやの染物は、細かな職人の手作業で出来ています。注染は生地の糸一本一本まで染め上げるため、裏表のないきれいな染め表現が可能なうえ、人の手で行うからこその繊細なぼかしやにじみを楽しむこともできます。今では布の表面に機械で簡易に染めていく方法もありますが、やっぱり手作業の味を大切に、ものづくりをしていきたい。縫製も、昔からあるミシンを使ってひとつひとつ仕上げていくところに味わいがあります。職人はどんどん減っていて、最近ではコロナで廃業に追い込まれた会社も。でもこのものづくりの心と技術は、この先も残していきたいと思っています」
discussion④「パッケージ」
「ほ」の字がカワイイ!クラフト感たっぷりのパッケージ
◆パッケージにもきめ細やかな想いを込めて
製品が出来上がったら、いよいよ最終工程。「ほまれのふくろ」を商品としてカタチにしていきます。開発支援チームでは、商品自体の開発に留まらず、販売・流通を想定したパッケージや販促物の制作もサポート。コンセプトから携わっているチームならではの、手に取る人に想いが伝わるアイデアが生まれます。手ぬぐいの素材感を活かし、クラフトボックスを使ったナチュラルなテイスト。窓からのぞく袋の柄と同じラベルを合わせることで、シンプルながら遊び心のあるパッケージに。一番のこだわりは、センターにおかれた「ほ」の字。これは、「ほまれのふくろ」を象徴する落款のようなデザインを作りたいという、ほまれや土田さんとデザイナー根さんのアイデアから生まれたもの。「角字」という漢字を直線的な図形だけで表す、半纏の柄の作り方で、ほまれやの「ほ」の字を図案化しました。ほまれやの、そしてほまれのふくろの「ほ」がひときわ目を引く、インパクトのあるパッケージが出来上がりました。
マーケティング 大志田さん
▼マーケティング 大志田さん
「今回我々が手掛けるのは、手ぬぐいを袋にしたものではなく、袋にするための手ぬぐい。これは一見同じようで、全く別物です。だから、例えば仙台駅で見かける観光客や街中を歩く女性たちがこの袋を持っているのを見た時に、それが『袋にするための手ぬぐい』であるということが“ひと目でわかる”ことがゴールです。そのために、落款やロゴをアイポイントにして、これが『ほまれのふくろ』だとわかるビジュアルスイッチが必要になります」
注目してほしいのが、商品とともに封入されるリーフレット。商品の紹介はもちろん、企業の想い、「ほまれのふくろ」の物語が丁寧に織り込まれ、まるでひとつの読み物のような仕上がりに。サスティナブルな商品としての特徴もしっかり組み込まれ、手に取った人が細部まで目を通し、商品への想いを深めてくれるようなコンテンツになっています。おみやげ品としてインバウンドのニーズも捉え、英語表記がなされているのもきめ細やか。
Complete 完成!
5つの「ほまれのふくろ」が完成!
◆仙台らしい魅力が詰まった5つの「ほまれのふくろ」
初回の打合せから約4ヶ月。ほまれやの伝統技術と商品開発チームの想いと知見を集結して作られた「ほまれのふくろ」がいよいよ完成しました!伝統的な吉祥文様に仙台ゆかりの文様を織り込み、数多ある仙台モチーフのデザインとも一線を画す「仙台らしさ」を醸し出す5つのあずま袋。個性豊かな商品ラインナップをネーミングとともに紹介します。
■萩のふくいん
無病息災を表す六つの瓢箪と萩の模様。よい知らせ(=福音)が届きますように
■三日月光(てら)す雪
方策を表す雪輪と仙台藩祖・伊達政宗公の弦月を思わせる三日月をあしらいました。
■七竹玉世(ななたけぎょくよ)
生長の象徴である竹と七宝の意匠を施しました。美しい世が続きますように。
■永久(とわ)のまつり
仙台七夕まつりをイメージ。この美しいまつりが永久に続くように願いを込めて。
■すずめ舞うあさ
豊かさの象徴すずめと、成長を表す麻の組み合わせ。朝に踊る雀を描きました。
どれもカラフルで心躍るものばかり!エコバッグとしてはもちろん、普段使いにしても素敵な仕上がりになりました。ひとつひとつのネーミングからも、持つ人の幸せを願う想いが伝わってきます。
さらに、商品のコンセプトのひとつでもあるSDGs。「ほまれのふくろ」には、「絵解き(えほどき)」という仕掛けが。
蛍光ピンクの糸を切ると…
模様の全貌とともに、手ぬぐいが現れます
エコバッグにある蛍光ピンクの目印をほどき、開くと、可愛らしい手ぬぐいに早変わり!手ぬぐいの染まりのよさ、丈夫さを活かした、まさにサスティナブルな商品が出来上がりました。
promotion
◆商品を、多くの人の手に届くものに
仙台市産業振興事業団の新商品/新サービス開発支援では、商品の制作に留まらず、その後のプロモーションについても丁寧にサポートを行います。商品撮影やPOPの作成など、打合せの段階で設定してターゲットに商品をどうやって認知してもらうか、方向性をぶらすことなく商品の魅力を伝えられるようなコンテンツ制作にも伴走。オンラインショップの開設や販売先など、販路についても相談に乗ります。
製品完成後も続く、綿密な打合せ
新東北みやげコンテストへの出品にあたっては、必要な提出物のアドバイスはもちろん、コンセプトビジュアルや動画の制作なども行います。ここで作り上げたものは、その後自社で展開する際に活用することも可能。商品が開発支援チームの手を離れた後も手に取る人に想いが届くように、長く愛される商品を作り上げていきます。
開発支援チームがディレクション撮影
コンセプトが伝わるビジュアルも提案
「ほまれのふくろ」は、新東北みやげコンテストでも高い評価をうけ、見事入賞を果たしました。販売もスタートし、今ではショップやオンラインショップで、たくさんの人が手に取ってくれています。今までほまれやを知らなかった人たちにも、手ぬぐいの良さ、味わいを知ってもらえる新しい機会が創出されたのではないでしょうか。仙台を歩く人々の手に「ほまれのふくろ」が寄り添う、そんな幸せな光景がこれからたくさん見られそうです。
オンラインショップでも販売中
1枚あるだけで、果物かごがテーブルに鮮やかな彩りを与えてくれます
普段のお買い物に連れていきたくなる、かわいらしいデザインが特長です
終わりに
老舗染物店が大切にしてきた伝統的な手ぬぐいから生まれた「ほまれのふくろ」開発ものがたり、いかがでしたか?「アイデアはあるけれど、カタチにできない…」、そんなほまれやと商品開発のプロがタッグを組み完成した「ほまれのふくろ」。トレンドも捉えた全く新しいプロダクトながら、ほまれやが90年もの長い間受け継いできた技術と伝統、想いがたっぷり詰まった商品になりました。仙台市産業振興事業団の開発支援チームが大切にするのは、なにより企業の想い。今回の「ほまれのふくろ」も、多くの人にほまれやの想いが届きますように。そんな心が伝わる商品となりました。【ぜひこちらもご覧ください】
ほまれのふくろ│ほまれや(homareyashop.base.shop))
仙台市産業振興事業団では新しいプロダクトを発信したいと考える仙台市内の企業様のサポートを行っています。「ほまれのふくろ」開発ものがたりに興味を持ったら、ぜひご相談を。次のものがたりを紡ぐのは、あなたかもしれませんよ。
ほまれのふくろ【前編】はコチラ!
株式会社ほまれや
〒984-0817 宮城県仙台市若林区堰場12-5
Tel 022-221-6411
Url https://www.homareya.co.jp/
ライター/田代 智美