岩手缶詰株式会社
「魚介のリゾット缶3種3缶入り」

2023年1月10日

岩手缶詰株式会社は、仙台市産業振興事業団が主催する
第9回新東北みやげコンテストの受賞企業です。

最優秀賞「魚介のリゾット3種3缶入り」


パステルカラーを用いていながらも、その大胆なデザインが目を引く岩手缶詰株式会社の缶詰「Gift&Stock」。2021年の「第9回 新東北みやげコンテスト」で最優秀賞に輝いたのは、そのおいしさはもちろんのこと、商品の誕生秘話にありました。

写真:釜石では、サバやブリ、マグロなどの魚が毎日水揚げされています

岩手缶詰本社は、「鉄と魚とラグビーのまち」として知られる岩手県釜石市にあります。生産している商品の95%はOEM(*)で、その技術やノウハウを生かした自社ブランド商品の開発も行っています。
*original equipment manufacturerの略称で、他社ブランドの製品を製造すること


写真:営業課長の阿部さん。ユーモアのセンスにあふれた、缶詰愛あふれる方でした

営業課長の阿部常之さんは「この『Gift&Stock』は、博報堂とデザイン・イノベーション・ファーム TakramJapanとの3社共同開発なんです。弊社は主にサンマやイワシなどの缶詰を作っておりまして、『主食の缶詰をつくりたいね』という話は以前からありました。本格的に取り組もうとなったのは、東日本大震災がきっかけ。宮古市と大船渡市の工場が、震災で被災して倉庫が流されてしまったんです。倉庫も全焼して缶詰が散乱してしまいましたが、後から聞いた話ですが近隣住民の方が『岩手缶詰さんの缶詰を食べて生き延びたよ』と話していたそうです。それからも主食缶の話が出たり消えたりしながら、5年前から具体的に話が進み始め、『防災、備蓄の線で進めよう』となったんです」。

写真:「Gift&Stock」は、岩手缶詰の釜石工場で製造されています

開発当初は「お米」を缶詰にしようと試みたそう。
「缶詰は、製造工程の中で116℃ほどの温度で95分殺菌します。そうすることで長期保存が可能になり、調理も同時にできる。なので、缶の中に生米を入れればお米が炊けるわけですが、普通のお米やアルファ米、パウチでおかゆを作ってみたところ、どれも冷めるとベータ化して固くなってしまうという欠点がありました。あと、おかゆだと食べ応えがないし、味とカロリーももう少しほしいよね…という話になりまして。そこで思いついたのが、リゾットです。リゾットは生米から炊くし、味もつけられる。そして、玄米を使えばお米の食感を残しながらも、冷めても固くならずおいしく食べられることが分かりました」と、阿部さんは話します。

写真:「Gift&Stock」の製造ライン。丁寧に仕込んでいます

社内で粛々と試作を進めていく中で、博報堂から「防災食を一緒に開発しないか」という提案があったといいます。阿部さんは「ちょうどうちでやろうとしていたことと合致していたので、共同で進めました。味に関してはスムーズに決まりました。まず三陸の魚介に合う味で、ネーミングから味が想像しやすいもの。フレーバーは、岩手缶詰の商品開発チームがディレクションしました」。

写真:イナダとトマトのリゾット。そのままでももちろん、粉チーズをかけてもおいしくいただけます

写真:イナダとトマトのリゾットにたっぷりの粉チーズを加えて形を整え、ライスコロッケに。ワインにもぴったりの一品に仕上がります


博報堂がつないでくれた、世界的デザイン事務所TakuramJapanとの縁。「缶詰の会社では絶対に出てこないようなデザインで、『うわぁ、すごいな!』というのが感想でした。みなさん、スーパーなどの缶詰売り場に行くと分かると思うのですが、漢字で『鯖!』とか『いわし!』、ラベルも茶色とか、中身の写真…というのが多いですよね。でも、今回のコンセプトのひとつが『インテリアとして飾れる缶詰』でして。目につくところに飾っておいていただいて、いざというときにすぐ食べられるようにしてほしいという思いからそういうコンセプトになりました。もともと備蓄は備蓄、おみやげはおみやげで考えていたのですが、おみやげが備蓄になったらいいのでは?という発想に至りました。『備蓄で棚の中に入れていたけれど、棚が倒れて取り出せない』ということになっては仕方ないので。おみやげって、大切な人やお世話になった人に渡しますよね。その方たちの防災備蓄にもつながればいいな、という思いが詰まった缶詰です」。

写真:サバのカレーリゾット。スパイスの風味は効いていますが、辛さが苦手な方でも大丈夫!

写真:サバとカレーのリゾットは、スキレットにとろけるチーズを敷いて火にかけ、焼きリゾットに。キャンプでも楽しめそう



東日本大震災の経験を活かし、自分と大切な人の防災を考える_。
味だけでなく、このアイディアが大きな決め手となり、「第9回新東北みやげコンテスト」で最優秀賞を受賞することになりました。「お取引のある方から『おめでとう』と連絡をいただきましたよ」と、阿部さんも笑顔をのぞかせます。
また、このデザイン性が高く評価され、世界の「エル・デコ」(*)編集長25人が選ぶ、「エル・デコインターナショナル デザイン アワード(EDIDA)」にて、「ジャパニーズ・ソーシャル・デザイン・プロジェクト賞」にノミネートされました。
*「エル・デコ」は、ハースト婦人画報社より2ヶ月に1回発行されているインテリアとデザインの雑誌。25ヶ国版が世界28ヶ国で発行されており、世界で200万部以上を発行し、1000万人以上の読者を得ています。


最後に、阿部さんに食べ方について伺いました。
「もともと防災食なので、真冬の深夜に食べてもおいしいよう設計されています。もちろん、温めてもおいしいので、普段の食卓に温めて出していただいてもいいかと思いますよ」。

写真:イカのクリームリゾットは、濃厚なクリームの味わいがクセになる一品です

写真:イカのクリームリゾットは、お皿に野菜を敷いて「サラダリゾット」に。野菜のシャキシャキした食感がリゾットのおいしさを引き立ててくれます

写真:インテリアとして飾っても違和感のない「Gift&Stock」。あなたの大切な人への贈り物にどうぞ


大切な人の「いざ!」の時に役立つかもしれない「Gift&Stock」。
渡すだけであなたの思いが伝わる、素敵な缶詰です。



<番外編>
岩手缶詰では、思わず二度見してしまう「鯖チョコ」缶詰も製造販売。

阿部さんは「我々は普段からフレーバーについて考えているのですが、缶詰の定番である『みそ煮』や『水煮』だけでなく、奇抜で誰も真似できないようなインパクトのある商品も生み出したいと考えています。意外と合うサバ×チョコの缶詰を食べてみてください」。
「Gift&Stock」と一緒に、攻めの「鯖チョコ」もいかが?


岩手缶詰株式会社

所在地 本社/〒026-0013 岩手県釜石市浜町 1-1-205(市営釜石ビル2F)
TEL 0193-22-3001(代) FAX 0193-24-3005
URL https://www.iwa-kan.com/


取材/2022年12月



これまでの「銘品ものがたり」もご覧ください。