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「学」の力を企業に取り入れよう!-産学連携の活用-|コラム#32

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2022.02.10

みなさん、こんにちは。ビジネス開発ディレクター・石巻専修大学客員教授(産学連携担当)の斉藤 方達です。

20年ほど前から、大学などの「学」の社会的な立ち位置を変える動きが活発になっています。ひとつには、教育機関として、教育内容や育成する人材への要望の変化があります。また、18歳人口が減少するなどの社会的要因も「学」への変化を促しています。

「学」への要請のひとつに、地域や産業などへの積極的な貢献が挙げられます。
これまでも、「学」は研究で生み出された成果を社会に還元する、育成した人材が社会で活躍するといった形で貢献してきましたが、近年は、より積極的な「学」の活用の動きが出てきました。

この機会に、企業でも「学」の活用に取り組んではいかがでしょうか?
今回は、企業側の視点から産学連携について考えてみます。

「学」の育成した人材を取り入れよう

1、「学」が育成した人材を取り入れよう

約30年前(平成初期)、大学進学率が30%を超え、令和2年度の大学(学部)進学率は54.4%にまで上昇しました。高卒者の進路で、大学や専門学校も含めた進学率は、83.5%となっています。まさに、高卒の就職者は、昔と意味が違う貴重な存在です。

以前から技能的能力を重視する企業では、「工業高校卒を採用して、職人に育てる」との話を聞きます。しかし、高卒の現状を考えると、高卒採用は困難となっている上に、現在、宮城県に工業高校は5校しかありません。統合が進み、多くは〇〇総合高校などとなっています。再編により、機械科の定員が400名を切っているのです。進学者が半分ほどいると考えると、就職するのは、200名程度です。さらにいうと、この数は、年々減少しています。これは、他の専門課程の高校も同じです。

令和2年度学校基本調査(確定値)(文部科学省)

企業が新卒採用を考える場合、大学卒が主となっている状況です。
大学から人材を採用するのであれば、地元企業のみなさんにはぜひ、「インターンシップ」の活用をお勧めします。

インターンシップは、採用活動ではありません。しかし、学生さんに自社を知ってもらう重要な機会です。

多くの大学では、インターンシップを取り入れており、単位認定しているケースもあります。企業にとっては、インターンの受け入れは、負担かもしれませんが、学生さんが企業と「学」をつないでくれる貴重な機会となることでしょう。

新卒採用者について付け加えると、残念なことに早期離職が、高水準となっています。この一因と考えられる「ミスマッチ」の防止にも、インターンシップの活用は、有効と思われます。ぜひ、企業に人材という形で「学」の力を取り入れてください。

2、「学」の知的集積を取り入れよう

「学」の知的集積を取り入れよう

教授室は、本などの文献の山があるイメージではないでしょうか?
「学」は、「研究」と「教育」を担っています。そのために「学」は、多くの知的資源(情報)を収集して分析・整理して自ら活用できるようにしています。どの大学でも立派な図書館が整備され、運用されています。多くの場合、一般利用もできます。

企業がビジネス上の判断のために、ある分野の技術動向や国内外の動きを知りたい時に、企業が容易に情報を取り入れる手法があります。それが「学」の集積した情報が活用する方法です。もし、当該分野の先生がいれば、情報が整理されていますし、専門家としての分析やアドバイスを得ることも可能です。

近年、各大学には、企業連携のための窓口整備がされています。ほとんどの「学」では、無料で相談を受け付けています。また、一般向けセミナーの開催なども活発です。
仙台市産業振興事業団でも、産学連携支援を実施しておりますので、関心があればぜひご相談下さい。まずは、「学」での相談やセミナーを活用して知的財産を取り入れましょう。

3、「学」の測定・分析力を取り入れよう

「学」の測定・分析力を取り入れよう

「学」は、研究活動のために、実験や測定、分析のツールを整備・運営しています。今やコンピューターシステムを整備・運営していない「学」は無いでしょう。大企業ですら、実験や測定、分析のツールを社内でそろえるのは、コストの負担が大きくなります。そこで利用すべきなのが「学」です。

「学」と連携することで経営資源を補えれば、大きな競争力強化になります。
理工系大学を中心に、所有する分析測定器の一般利用などの制度を整備しています。これも相談は無料の場合が多く、利用する場合でも実費負担で済むことも多いようです。
「学」の実験や測定、分析の能力を取り入れましょう。

4、「学」の技術シーズを取り入れよう

「学」の技術シーズを取り入れよう

産学連携で一番イメージされるのは、研究成果(技術シーズ)をベースに、新製品を開発することではないでしょうか。近年、ニュースとしては、大学の研究を実用化するベンチャー企業が取り上げられることも多々あります。この動きは、「学」の制度変更などにより、可能になった手法です。

近年、大学発ベンチャーの創業や知的財産権の移転を行うTLO(Technology License Organization)が整備されるなど、活性化が図られています。

従来、企業が研究成果を受け入れるには、共同研究などを行なって「生み出すプロセスに関与」する必要がありました。しかしこれには、多くの時間と費用が必要で、企業にとって高いハードルとなっていました。しかし、制度整備が進み、地域企業が適正な費用負担で、「学」の研究成果にアクセスし、技術移転と指導を受けることが可能となりました。

私がお手伝いしたケースでは、仙台市内の中小企業が、東北大学のTLOを通して技術移転を受けて商品化したケースがあります。公的な補助金も活用しましたが、直接の費用は、数百万円のオーダーでした。
ハードルが下がった「学」の技術シーズを取り入れ新製品を開発に取り組みましょう。

5、まとめ

近年、「学」の社会貢献の促進の一環として、産学連携を進めるための環境が整備されてきました。企業にとって「学」は、より身近なビジネスパートナーとなりえると考えます。

本コラムでは、企業における「学」活用のための切り口をいくつか紹介しました。

これ以外にも、社会人となってから必要となった教育を受けることができる社会人向けの制度(大学院や聴講生)もあります。

大学には、コンサートホールなどの立派な設備を備えていることが多くあり、これらの施設を一般利用できることがあります。先の震災では、石巻専修大学がソフト・ハードともに、支援拠点になりました。

大学によっては、受験生向け以外にも、一般や企業の見学を受け入れています。まずは、行ってみるのもありだと思います。
ぜひ、敷居を意識せず、大学の窓口に連絡してみてはいかがでしょうか?

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斉藤 方達

インキュベーション・マネージャー

斉藤 方達

技術や産学連携を通じた事業構築を応援!大学教員も兼務し「学」の視点からもアドバイス。起業者や新事業のサポートも対応します。