ディーゼル車に搭載されている噴射ポンプやカーエアコンなどの自動車電装品のメンテナンス、各種自動車用品の販売などを行っている「株式会社仙台三徳商会」。創業から100年近い歴史を誇る一方、近年の製品メーカーの品質向上等による外部環境変化に伴って業績は悪化し、経営改善が必要となりました。いずれ四代目として事業を承継する岩松祐希さんはオーエンを利用し、多岐にわたるお悩みを相談。人事労務における課題解決や高齢化対策、営業手法の見直しなど、オーエンが伴走支援している取り組みをご紹介します。
オーエン活用のポイント
- 収益性向上のための経営計画をサポート
- 人事評価制度の導入や就業規則諸規程の改訂支援
- 組織の高齢化対策、若手人材獲得に向けた労働環境の整備
01 どんな事業を行っていますか?
1929年創業の仙台三徳商会は、自動車電装品のメンテナンスや販売などを行う会社です。カーナビをはじめとした車両に搭載されている電装部品の脱着やカーエアコンの故障診断・修理のほか、ディーゼル車の燃料系・吸排気系の故障診断、それに伴う噴射ポンプのリビルト品製造やインジェクタの取り扱いなど、大型・小型を問わず自動車電装部品に関わる事業を展開しています。
弊社はトヨタグループの自動車部品メーカー・デンソーの代理店(サービスステーション)といった大きな後ろ盾に加え、東北の同業他社でも取り扱いの少ない商品を製造してきたという特徴を有しております。カーディーラー様をはじめとしたお客様方の旺盛な需要や品質要求に応えていこうと日々研鑽を重ね、その商品の安定供給に注力することで利益を得られる時代が長く続きました。しかし近年の品質向上によって、修理や買い替えの需要は徐々に減り、弊社の売上も低迷。現在、経営回復に向けた施策や課題解決に取り組んでいるところです。
02 オーエンを利用したきっかけは?
業績が悪化したタイミングで、銀行融資を受けるための経営計画を作成する必要がありました。そこでご紹介いただいたのが、中小企業診断士・社会保険労務士の髙橋広之さんです。それから弊社の組織的な問題である高齢化対策や就業規則の改訂など、さまざまなことを高橋さんにご相談するように。経営計画の達成や業績改善に向けて、社内規程の整備や人事評価制度の導入なども進めていくことになりました。
髙橋さんがオーエンのビジネス開発ディレクターを務めるようになってからは、仙台市産業振興事業団内の相談ブースやオンラインを活用し、週1回ほどのペースでアドバイスをいただいています。
03 どのような支援を受けましたか?
まずは、社内諸規程の作成や改訂です。労働法の改正に合わせて育児・介護休業規程とハラスメント防止規程を就業規則に追加したほか、これまで弊社では導入していなかった人事評価制度や出張旅費規程の作成も支援していただきました。
また弊社は10年ほど従業員が入れ替わっておらず、高齢化の進行が課題となっています。さらに業界の人手不足も相まって、65歳以上の従業員への対応について明確化を図りました。仕事内容の見直しやそれに伴う賃金体系の見直しを行うなど、70歳まで継続雇用が可能な体制づくりに取り組んでいます。
経営の立て直しに伴うコストカットのために、人員削減や給料のベースダウンを求める声も社外からありましたが、髙橋さんは弊社の事業特性を踏まえたうえで、その必要はないと判断。むしろ現役世代のベースアップを実現していくことが、モチベーションの向上や若手人材の獲得につながるだろうと提案してくださいました。
さらなるコストカットが難しいのであれば、どのように売上を伸ばしていくか。そこでアドバイスしてくださったのが、既存顧客への再アプローチが重要だということ。まずは売上が落ちた既存顧客の掘り起こしを行ってから、その次に新規顧客の開拓へ。弊社のような法人向け(BtoB)を主体にしている商売は、既存顧客との関係深化はもちろんのこと、顧客数を増やしていくために直接人に会うことや地道な名刺配りが大切だと教えていただきました。
そして顧客先への訪問やヒアリングを重ねるうちに、クライアントから現場での困りごとを相談していただけるように。過去にお取引のあった顧客が戻ってきただけでなく、新規の売上拡大につながる人脈を広げることもできました。
「なんでも相談できる」と髙橋さんに信頼を寄せる岩松さんは、この1年4カ月ほどで50回以上オーエンを利用。
04 実際に専門家から支援を受けた感想は?
髙橋さんは中小企業診断士と社会保険労務士のダブルライセンスに加えて、社長業の経験もお持ちなので、トータルで経営を支援していただけることが大変ありがたいです。その場しのぎの利益や目先のコストカットにとらわれることなく、会社が持続的に成長していける環境づくりや従業員のやる気を引き出す仕組みをサポートしてくださっています。
たとえば人事評価制度の導入においては、「賞与を決めることや評価自体が目的ではなく、日頃のコミュニケーションや従業員の成長を促すことが大切」だとアドバイスをいただきました。会社が成長するためには社員の成長が不可欠であり、業績が伸びる会社はコミュニケーションが活発だと。まさにその通りだなと、髙橋さんとの会話の中で気付かされることも多いです。
それから従業員との面談や社内会議をしっかり行うようになったところ、業務の課題を相談してもらえるケースが増加。メーカーとのやり取りや研修に取り組む従業員を見ていても、以前より主体的に行動するようになったのではと感じております。
05 今後、どのようにオーエンを利用していきたいですか?
おかげさまで黒字化が見えたので、今後はさらなる売上向上や組織力強化に向けた相談を続けていきたいです。また自動車業界で長年培ってきた当社のコアコンピタンスを自動車業界以外にも生かしていくことができないか、オーエンの皆さんと一緒に考えさせていただきたく思っております。
これまで社内規程や労働環境を整備してきた理由の一つとして、人材育成や若手の採用を推進したいという思いがありました。これから採用広報や従業員の研修などにも力を入れていきたいので、その仕組みづくりや助成金の申請などもご支援いただきたいと考えています。
そしていずれは、私が四代目として事業を承継する予定ですので、準備や税金対策も進めなくてはなりません。この相談も引き続き、オーエンにお願いしたいと思っています。
このように多岐にわたる経営課題をワンストップで相談できるのが、オーエンの大きな魅力です。これをコンサルティング会社に相談するとなれば費用面のハードルは高いですが、公的な相談窓口であるオーエンなら無料。サポートしてくださる専門家や職員の皆さんも話しやすいので、気兼ねなく利用できることに感謝しています。
中小企業診断士・社会保険労務士 髙橋 広之
支援担当者からコメント
株式会社仙台三徳商会様に対して、就業規則・諸規定の改訂や継続雇用年齢上限の引上げ、人事評価制度の導入等による社内体制の整備を支援して参りました。
売上拡大を図るための既存顧客の掘り起しや新規顧客の獲得については、「これをするべきだ、これをした方がいいよ」というような具体的なアドバイスはしておりません。オンラインや来訪いただいて情報交換や雑談の中で得られたヒントを基に会社にあう方法で実行されました。その努力の甲斐もあり、今年度は単年度の黒字化を果たされました。今後は、当社の状況に応じた社内体制の改正や、営業活動の支援を通じて、当社の発展に寄与していきたいと思っています。
今回ご紹介した企業
株式会社仙台三徳商会
燃料噴射ポンプやカーエアコンなど、自動車電装品のメンテナンスや販売を手がける企業。1929年創業の歴史を誇り、大手自動車部品メーカー・デンソー指定のサービスステーションとしても実績と信頼を重ねている。
インタビュー・ライティング/三日月エディット 野原 巳香
撮影/渡邉 樹恵子
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