社会保険労務士の梅原です。
私たち社会保険労務士は日々、人事や労務のご相談を企業からいただいています。新型コロナウイルス感染症の拡大が深刻化してからは、事業活動の縮小を余儀なくされ休業した事業者からのご相談(主に雇用調整助成金)が多くなり、これまでに数百件のご相談に対応してきました。そこで今回のコラムではこれまでの相談対応を通して感じたことを書きたいと思います。
平時の取り組みが有事にいきる 人事労務
雇用調整助成金は休業に際し、休業手当を従業員に支払った事業主に支払われる雇用維持のための制度です。厚生労働省によると8月28日時点で雇用調整助成金の累計支給申請件数は全国で100万件を超えました。コロナ禍において休業者数が急増している様子が伺えます。
仙台市中小企業応援窓口でも雇用調整助成金の申請に関するご相談が人事労務のご相談の中で大半を占めています。私もこれまでに多くのご相談をお受けしてきましたが、相談対応を重ねるにつれて、申請作業に関しては企業間で大きなバラつきがあることがわかってきました。
例えば、普段から労働契約書や賃金台帳等をきちんと整備している企業は雇用調整助成金をスムーズに申請できています。一方で、1人でも雇用したら正社員・パート・アルバイトの別を問わず労災保険に加入しなければいけないことを、助成金を申請する時に初めて知ったという事業主も少なくありませんでした。労災保険未加入の場合は、まず労働基準監督署へ労災保険の加入手続きに行くところからのスタートとなり、助成金申請までに多くの時間を要することになりました。
「備えあれば憂いなし」といいますが、特に人事労務に関しては平時の取り組みや備えが有事にいきてくるように感じます。新型コロナウイルス感染症の影響を問わず、労働者が安心して仕事をできるようにするためには、法令を遵守する組織づくりが欠かせません。また、社会情勢が大きく変化している中では、コンプライアンス遵守に加えて、社員一人ひとりに寄り添い、先行きが不透明な状況下でも生き残れる強い組織体制・社内制度をつくる必要があります。
コロナ禍はそうした取り組みを始めるきっかけになるかもしれません。人事労務は経営を支え、社員を守る重要なものです。忙しくて手が回らなかったり、悩んだりすることも多くあるかもしれませんが、そのような時は1人で抱え込まず、社会保険労務士に遠慮なく相談してください。できることからはじめていきましょう。
不安を安心にかえる役割
エマ(12歳)
コロナウィルスの隔離対策中でも外出していいのですか?フレデリクセン首相
外出して大丈夫です。むしろ、ぜひ外に出かけてください。例えば、森や自然の中での散歩などは非常に良いことです。ただし、お互いから距離を取ることを忘れないでください。
デンマーク政府が新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、学校や店舗の閉鎖、国境の封鎖などの重要な決定を発表した直後に、メッテ・フレデリクセン首相は子どもから寄せられた質問にこのように応え、安心感を与えたそうです。
メッテ・フレデリクセン首相(デンマーク)
(引用)Mette Frederiksen holdt også pressemøde for børnene: Se det her
ご存知のとおり、日本でも休校や休業、外出自粛が行われました。日本の子どもたちは、普段は仕事で家にいないお父さんやお母さんが家にいる状況をどのように感じたのでしょうか。学校の再開の目処も立たない中、大人の気持ちを敏感に感じとり、不安を抱えて過ごす子供達も少なくなかったと思います。
子どもだけでなく、大人にとっても不安な状況は続いています。メッテ・フレデリクセン首相のようにとはいきませんが、私も社会保険労務士として、企業の皆さまの不安を安心に変えられるような存在でありたいと思います。コロナに負けない強い組織を一緒につくっていきましょう。
おわりに
令和2年1月24日から6月30日までの休業等については雇用調整助成金の支給申請期限が令和2年8月31日から令和2年9月30日に延長されました(7月31日までの休業等の申請期限も9月30日が締切りです)。
休業手当が受けられなかったパート・学生アルバイトの方々も「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」を受給することができる可能性があります。
どのような助成金が対象になるのかわからない場合でも大丈夫です。お気軽にご相談ください。
相談予約は電話またはフォームで承ります。
特定社会保険労務士・国家資格キャリアコンサルタント
梅原 美鈴
人事労務の課題解決を応援!労務管理や個別労働関係紛争など労働法規にまつわる疑問・不安にお応えします。社内では解決しづらいデリケートなお悩みも遠慮なくご相談ください。