こんにちは。フードコーディネーターのカワシマヨウコです。
前回のコラム「さあ、みんなでHACCPに取り組もう!」では、HACCP(ハサップ)についての紹介と導入義務化についてご説明しました。
今回はHACCP導入の土台ともいえる一般的衛生管理プログラムについて、基本と実施のポイントをお伝えします。
衛生管理の基本のキ「一般衛生管理プログラム」
一般衛生管理プログラム(PP、PRP)は、製品に対する混入、汚染、増殖を防止するためのものです。
地方自治体の条例にある「営業施設基準」や「管理運営基準」も、一般衛生管理プログラムがもとになっています。これらをクリアして初めて、営業許可を取得することができるため、食品にかかわる事業者の方にはおなじみかもしれません。
一般的衛生管理プログラムとHACCPの関係
一般衛生管理プログラムはHACCPの前提や土台とよくいわれます。これは、どういうことでしょうか。
前回のコラムでもお伝えしたとおり、HACCPを導入しただけでは食品事故を未然に防ぐことはできません。なぜならHACCPは生産工程を管理するためのシステムであって、施設や設備などの環境衛生については管理対象外であるからです。一般衛生管理プログラムによって、お店や工場の環境衛生が確保されて初めてHACCP(生産工程管理)が成り立つことを覚えておきましょう。
一般的衛生管理プログラムの10項目
一般的衛生管理プログラムでは、実施する衛生管理を10項目に分けています。
- 施設設備の衛生管理
施設や設備の清掃や洗浄、消毒、清潔保持の方法を決めてマニュアルを作ります。 - 従事者の衛生教育
食品衛生責任者を選任します。 - 施設設備及び機械器具の保守点検
施設、設備、機械器具の破損がないか、作業中に不具合が起きないように、定期的に点検をします。 - そ族昆虫の防除
ねずみ類や虫が混入しないように予防します。 - 使用水の衛生管理
年に1回以上の水質検査や、定期的に貯水槽の清掃や殺菌、浄水装置があればその整備も行います。 - 排水及び廃棄物の衛生管理
排水や廃棄物の処理、保管、廃棄の方法を決め、実施・記録をします。 - 従事者の衛生管理
従事者の健康管理、服装や手洗い、衛生管理に対する訓練を行います。 - 食品等の衛生的取り扱い
食品の受け入れ、保管方法、または製品の点検のために、保存や検食を行います。 - 製品の回収方法
製品回収の必要が生じた際の責任体制や消費者への注意喚起、回収方法などをあらかじめ決めておきます。 - 製品等の試験検査に用いる機械器具の保守点検
破損や故障を防ぐために、定期的な点検を実施します。
衛生管理のカギは無理せず継続できること
一般的衛生管理プログラムでは上述の10項目に関してそれぞれ「作業内容、実施頻度、実施担当者、実施状況」を明記し、確認・記録していきます。
確認方法や記録方法についても自社で決めていく必要があります。決定に際しては、実際に運用した場合にきちんと継続できるかどうかを検討しましょう。現場のすべての従業員が無理なく順守でき、いつでも衛生管理状況を確認できる体制を整備することが重要です。
また、継続的な衛生管理の実施には、具体的な手順書(衛生標準作業手順)の作成も有効です。衛生標準作業手順は、実行する内容を「いつ、どこで、だれが、なにを、どのようにするか」をまとめたものです。手順書によって適切な衛生管理が習慣化されると、HACCPの導入がぐっと楽になります。同じく手順を明文化する作業があるからです。
おわりに
今回は一般的衛生管理プログラムの役割や具体的な10個の実施項目、そして運用のポイントについて説明しました。
たくさんの項目があり、難しいように思われるかもしれません。しかし、1つ1つを見てみると実は基本的なことが多いとお分かりいただけると思います。これらを怠らずに続けることで、衛生と安全確保の土台が完成します。ここまでくれば、危害の発生を未然に防止できるHACCP導入は目前です。
次回はいよいよHACCP導入編です!HACCPに基づく衛生管理の「7原則12手順」に沿った進め方についてお伝えをします。
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フードコーディネーター
カワシマ ヨウコ
メニュー開発から食品表示、HACCP、農商工連携まで幅広くフードビジネスを応援!食通も唸る商品づくりに企業と一緒に取り組みます。