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社会課題解決とビジネスは両立するのか!?~時代と共に変化する消費者意識~|コラム#39

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2023.11.07

社会課題解決とビジネスは両立するのか!?~時代と共に変化する消費者意識~|コラム#39

こんにちは。マーケッターの片岡です。私はオーエンで、主にマーケティング戦略づくりや販路開拓に関する支援を担当しています。

この夏は今までに無いような暑さが続き、また雨が降れば洪水になったりと、気候変動を身近に感じるようになってきました。最近ではメディアでも、環境変化や食料危機など、グローバル的な社会問題が取り上げられ、SDGsに関連する番組もよく見るようになってきました。今回は社会課題解決の取組みとビジネスとの関係性をテーマに、最近の消費行動を踏まえて考えていきたいと思います。

 

1. ビジネスの基本構造

商売は「誰に・何を・いくらで」提供するかを基本とし、お客様との関係性のパイプをどのように太くしていくかが重要です。パイプが太くなれば、それだけ経営資源の循環も活発となり、事業も拡大していきます。その為には、自社の商品やサービスの購入をきっかけに、お客様をファンにさせ、その先にはアンバサダーとして自社や商品を拡散してもらえれば、営業にコストをかけなくても事業の好循環が生まれるようになります。

例えば、2021年の新語・流行語にノミネートされた「推し活」。主にアイドルやキャラクターなどの活動や夢の実現を、ライブへ行ったり商品購入により応援することですが、ファンはSNSを活用して情報を拡散したり、新たな仲間を集めたりと、推しの取組みに参画しながら共に成長することで、幸福感や達成感を得ています。特に若者を中心に、この推しをつくることに積極的であり、このような消費は「ヒト消費」などとも言われています。

このように何かのきっかけ(商品・サービスの購入など)をもとに、顧客を巻き込みながら自社の事業や活動に参画してもらえると、様々な拡がりが生まれてきます。

 

2.社会と共に変化する消費行動

私たちが商品・サービスを購入することを消費行動と言いますが、消費行動は時代とともに変化し続けてきました。「モノからコトへ」という言葉をよく聞かれることも多いと思われます。高度経済成長期には、次々と新しい機能が追加された商品が生み出され、所得増加を背景とし、様々なモノが消費されていきました。消費者は「所有」することに価値を置き、最新鋭のものやブランド品を持つことがステータスとされていました。しかしモノがあふれてくると目新しさも無くなり、また機能性が必要以上に高くなると、モノを「所有」することから、商品やサービスを通じて得られる「体験・経験」などの感情的な価値を求めるようになりました。これがコト消費と言われるもので、旅行やアクティビティ、グルメ、趣味や習い事などの体験や経験にお金を使う機会が増え、自らの体験をSNSなどで発信し共感を得ることで、コト消費がさらに拡大していきました。川上徹也氏の著書『「コト消費」の嘘』(角川新書)では、コト消費を「純粋体験型」「イベント型」「アトラクション型」「時間滞在型」「コミュニティ型」「ライフスタイル型」「買い物ワクワク形」という7つのタイプに分類しています。

またSNSの普及に伴い、トキ消費・エモ消費・ヒト消費・イミ消費など、精神的な価値を求める新たな消費行動が次々と生まれてきています。

 

消費スタイル 特徴 流行した年代
モノ消費 希少性のあるブランド品を重視する 1970年代〜
コト消費 商品・サービスを通じた体験を重視する 1980年代 後半〜
トキ消費 一度きりの体験に消費行動で貢献する 2000年代 後半~
イミ消費 社会貢献できる商品・サービスを選ぶ 2010年代 前半~
エモ消費 感情を満たす消費体験を重視する 2000年代 後半~
ヒト消費 好きな人に関連する消費体験を重視する 2020年代 前半~

 

3.自己実現や貢献欲求を満たす「イミ消費」

上述の通り時代と共に消費の目的や位置づけは変化しており、これまでの単なる「所有」や「利用」ではなく、「価値観の体現」や「ライフスタイルの創造」に変わりつつあります。今回は、社会課題解決の取組みとビジネスとの関係性というテーマより、「イミ消費」について少し触れていきたいと思います。

「イミ消費」は、ホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリストの竹田クニ氏が提唱した概念であり、「ある商品を消費することで生まれる、社会貢献的側面を重視する消費行動」を指します。例えば、「エコ(環境配慮)」「地域貢献」「フェアトレード」「伝統の継承・保存」「健康維持」「オーガニック」などがキーワードであり、「自分がどうありたいか?」あるいは「どうあるべきか?」を指標として経済活動を行うという特徴があります。背景としては、2011年の東日本大震災による被災地支援が始まりとされており、「社会正義的消費観」によって、他者支援・地域復興活性化に貢献しようとするものです。最近では、福島のALPS処理水の海洋放出に伴い、ふるさと納税における水産物の購入額が高まったのもそのひとつです。

株式会社ネオマーケティングが行った生活者意識調査(第五弾)では、環境問題に対する普段の意識として、37.3%が環境に配慮した商品の購入意向を示しています。また商品の質が担保できていることは前提としつつも、“環境に配慮した商品”ということが購買につながる場合が一定程度あるということがわかります。加えて、38.9%と約40%が環境・社会問題解決に取り組む企業に好意的だということがわかります。また別の調査結果では、社会や環境に不誠実な企業の商品は買わないという人が66.1%と、企業の活動自体にも消費者の関心が高まっていることが伺えます。

つまり消費者にとって消費選択するにあたって、「社会貢献」という価値観が、多くの人に重視されるようになっていると考えられます。

→参考記事 PR TIMES「生活者意識調査 第五弾」

 

4.社会課題解決とビジネスの事例

これまでは消費者の消費行動や意識の変化を見てきましたが、今度は企業ビジネスの取組みから見ていきたいと思います。先日、東京インターナショナル・ギフト・ショーのセミナーで、一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協議会の深井事務局長より面白いお話をお伺いしましたので、ご紹介いたします。

ニチバンのセロテープ®

皆さんにも馴染みのある「セロテープ®」ですが、OPPテープとの違いはご存じでしょうか?私も知りませんでしたが、ニチバンのセロテープ®は、1948年の発売当初から一貫して植物性の原料を使用しており、セロハンの原料は木材パルプ、粘着剤は天然ゴムと松脂などの天然樹脂が主成分で、巻心は再生紙です。一方でOPPテープは、ポリプロピレンフィルムに主にアクリル系粘着剤を塗布したテープで、原料は主に石油由来の成分で構成され、特有の刺激臭もあります。その為、使いやすさ等にも違いがありますが、焼却時のCO2排出量にも違いがあり、セロテープ®は環境に配慮したエコ製品でもあります。

あまりにも身近な商品の為、普段は特に気にもとめないテープですが、もし仮に日本全国10万店の小売店がOPPテープからセロテープ®へ切り替えたら、年間約6,300tものCO2の削減が図れるとのことです(ニチバン㈱HPより)。ニチバンでは、セロテープ®のサステナブルなビジネスへの取り組みを「Small Action For the Future」として推進を開始し、セロテープ®の導入により本取組みへ賛同する企業や団体を集め、現在では117社が賛同しています。ホームページでは、117社の賛同により、年間361tのCO2削減につながっているとのことです。目標まではまだまだですが、小さな取組みが様々な企業(=お客様)の共感を生み出し、セロテープ®の導入という協力や参加の行動が生まれ、新たな付加価値となっている事例かと思います。このようなお話を聞くと、私も普段購入するテープの選ぶ基準が少し変わってくる気がします。

 

5.社会課題解決とビジネスは両立するのか!?

最後に、今回のテーマである社会課題解決とビジネスの両立についてですが、結論的には両立すべきものであると考えます。そもそも、ビジネスとは社会をもっと便利しようとしたり、困りごとを解決する為の手段であって、ビジネスそれ自体が社会課題の解決につながるものであると考えます。これまでは物質的な豊かさを求めて、モノの価値がクローズアップされてきましたが、最近ではココロの豊かさが求められ、感情的な価値に重きが置かれてくるようになってきました。おそらく皆さんの商売においても、何かしら社会の課題に貢献できるポイントや、そもそもこんな問題を解決しようという理念があるのかと思います。商品のPRの一部に、このような視点を少し加えるのもポイントかもしれません。

少し大袈裟に目標を立てながらも、小さな取組みから発信を行い、お客様を巻き込んでいくことが、これからの世の中で重要なのかと考えられます。

 

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片岡 修一

マーケッター

片岡 修一

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