株式会社石井商工|デジタル化推進補助金活用事例#1
POSレジを導入したインボイス対応と管理コストの削減
令和5年に創業50周年を迎えた「石井商工」。祖父の代から数え、現社長は3代目にあたります。当事業所(六丁の目)では、もともと鉄工業をメインにスタートしましたが、顧客のニーズにあわせ左官工向けの道具販売の割合を増やし、今では道具販売が柱となりました。特に左官鏝(さかんごて)の取扱い数では東北トップクラスの品揃えを誇ります。
「左官鏝は現在、ホームセンターでも購入することができます。でもプロの左官工の場合、目的に応じて鏝を変え、形や大きさ違いでいくつもそろえますし、また『しなりの強いもの』『硬さのあるもの』など、微妙な使い心地を追求します。
そうしたニーズに応えるために、4~5社のメーカーとお付き合いするほか、一部オーダーメイドでお応えしているお客さまもいらっしゃいます」と説明するのは、現社長の妻であり常務取締役の石井ミワさん。長年、堅調な経営を続けてきた同社ですが「仙台市地域企業デジタル化推進補助金」の活用を決めた背景には、いったいどのようなものがあったのでしょうか。石井さんにお話しを伺いました。
導入ツール・システム
- POSレジシステムと管理用タブレットの導入
取り組みの効果
- レジ、領収書発行、在庫管理業務が効率化でき、担当者の従事時間を2割程度削減
- PCからの請求書発行も可能になり、従事時間が1割減
01 補助金を活用してどのような事業を行いましたか?
「POSレジシステム」と、それと連動した「管理用タブレット」を導入しました。これまでは手打ちの旧式レジを使用していましたが、POSレジの導入により、商品に添付したバーコードをリーダーで読み取り、金額や販売商品をタブレットに表示させる形になりました。バーコードには品番と金額の情報が登録されていて、レジを通した記録がそのまま保持されるため、「どの商品がいつ、いくつ、いくらで売れたか」を自動で管理できるようになっています。
02 どのような課題があり、補助金を申請しようと思ったのでしょうか?
これまでの業務で一番課題となっていたのは「商品管理に手間がかかり過ぎる」ことでした。レジが旧式だったために商品登録ができず、売れた商品はすべて手書き伝票で管理する必要があったんです。事務は私ともう一人の2人体制だったため、どうしても一人にかかる負担が大きくなってしまって……。手書きゆえに誤記載もありましたし、同一商品に別々の名前がついていて、同じものを別商品として管理してしまう事態も発生していました。一番困るのは帳簿にまとめるときです。これらの人為的ミスを「何をどう間違えたのか」と、考えながら修正しなくてはならず、忙しいときは当然ミスも増えますし、修正にもかなり時間をとられていました。
また領収書発行も手書きで対応していたため、お客様をお待たせしてしまう点も気になっていました。当社のお客様は工務店など法人が多く、通常の小売店と比べると領収書発行の機会はかなり多いんです。先にお話しした通り、売れた商品は都度手書きでまとめるのですが、領収書発行が立て込むと、同時に商品管理もおろそかになってしまう危険もありました。重ねて2023年10月からはインボイス制度に対応する必要もあり、領収書を手書きすることへの限界を感じ始めていたんです。
そんな折に仙台商工会議所を通じて、「仙台市地域企業デジタル化推進補助金」セミナーの案内をいただきました。当初は「何か有益な情報が得られれば」と軽い気持ちで参加をしたのですが、いざ説明を聞き「まさに私たちのためのサポートだ!」と、一も二もなく申請を決意しました。またセミナーではオーエン(仙台市中小企業応援窓口)のアドバイスも頂戴し、私たちが抱えている課題を解決するためにはどんなシステムがフィットするか、システム選定にも助言をいただくことができました。その点でも非常に有意義でしたね。
03 課題を改善する上で、大変だったことについて教えてください。
導入に際してはさほど大変だったこともなくて(笑)。POSレジへの移行は比較的スムーズでしたし、操作に関しても1度“お試し体験”をさせていただき、私も事務員さんも「大丈夫そうだね」と自信を持つことができました。品番や金額の登録も、これまで販売ソフトで管理していた帳簿と紐づけるだけでしたから、さほど手間はかかりませんでしたし「もっとはやく導入しておけばよかった!」と思ったぐらいです。
機器の選定に関しては「タブレットで管理できる、操作性の良いもの」、そして「表示画面に、できるだけ多くの商品を表示できる」点を指針にしました。特に表示画面については、当社の販売する左官鏝に「同じ型のサイズ違いが10数種類ある」という商品展開のものが多く、「レジひとつ打つのに、何画面もスクロールする状況は避けたい」という思いがありました。
商品管理をデジタル化するにあたり、唯一「データのバックアップ」が不安点でした。しかしデータ自体はクラウドに保存されるため、例え専用端末に不具合が発生しても、システムにログインできるPCなどの端末があれば問題ない、ということで安心することができました。
04 ITツールの導入によってどのような成果が得られましたか?
実はPOSレジを使用しての営業はこれからなんですが、導入によって「これまで悩んでいたことが一気に解決できるのでは」と期待しています。商品管理については、POSレジを通すだけで記録でき「販売したものを手書きする」「それを帳簿へまとめる」という作業が不要になりました。また領収書もインボイス対応のものをレジから直接発行できるので、お客様をお待たせすることがなくなります。これにより、私たちの業務時間も2割ほど削減されました。
お客様の中には売掛けで購入され、後からまとめてお支払いされる方もいるのですが、その際の請求書も、POSレジと連動させたPC上ですぐに発行できるようになった点もメリットです。
一番期待しているのは「年末の棚卸し作業がほぼなくなること」です。これまで棚卸しは社長と私、事務員さん、さらに息子たちに“アルバイト”をしてもらって、総勢5人の1日がかりで行っていました。しかし今後はPOSレジを通した記録のみで完了できるようになります。これが何より大きな利点だと感じています。
05 最後に、今後の展開について教えてください。
予定しているのは「ECサイトの立ち上げ」です。先日、中小企業庁の「IT導入補助金」の申請が無事通りましたので、それを元にサイト構築をスタートさせます。 今のところは店舗販売分とECサイトからの販売分は別に管理し、POSレジと連動させる予定はありません。でも今後ECサイト分の扱いが増えてきたとき、新たな商品管理の手法を考える必要が出てくるかもしれませんね。現在は東北エリアのお客さまが中心ですが、ECサイトを通じて全国の工務店や左官職人さんに当社を知っていただければと考えています。
あわせて「子どもに向けた新事業のプラン」もあたためているところ。詳細はまだ秘密なんですが、POSレジ導入によって時間に余裕が生まれそうなので、そちらも少しずつ進めていく予定です。
実をいうと結婚前は、WEBサイトを作成する仕事に就いていました。当時はサイトデザインからコーディングまでひと通りを手掛けていて、当社のコーポレートサイトも私が作成したものなんです。 いわば「業務のDX化を推進する」側面のある仕事に就いていたわけですから、手作業による商品管理や書類発行には、当然歯がゆさを覚えていました。その一方で「職人さんや、手仕事メインのメーカーさんを相手にする会社に、DX化はなじまないのかも」と考えていた部分もあったんです。しかし今回のことで「決して難しいものではない」と大きな自信を得ることができました。これをきっかけに今後もITの力を上手に借り、新たな領域にどんどんチャレンジしていければと思っています。
企業概要
株式会社石井商工
事業内容:製造業・小売業(左官道具、金属製品製造・修理・リース)
https://ishii-shoukou.com/
本社
〒980-0811
宮城県仙台市青葉区一番町1丁目11-23
TEL022-227-3236
六丁の目店・工場
〒984-0011
宮城県仙台市若林区六丁の目西町3-45
TEL022-288-5757
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