開業者インタビュー
蒼塵窯
小売
関わる人をハッピーに。「陶芸」「まちおこし」は、その手段。
開業のきっかけを教えてください。
その前段階からお話しますと、僕は大手家具店でサラリーマンとして働き、仙台へは転勤でやって来ました。仙台で陶芸と出会い、「陶芸家になりたい」と思いました。大手にいても、陶芸家になれないと思い、地元の箪笥屋さんに転職し、営業力と人脈づくりに励み、5年ほど働きました。その間に、「蔵王でアトリエを使わないか」というお話をいただき、次のステップアップが来たと思いました。白石市で地域おこし協力隊の募集を見つけ、地域おこしをしながら、陶芸家を目指しました。地域おこし協力隊に決めたのは、兼業OKで、最長3年という期間が決まっていたからです。お尻が決まっている方が、人は本気になるでしょう?(笑)
白石市の地域おこし協力隊として、白石産ササニシキのブランディング、販路拡大に携わりながら、陶芸家として、3つの目標を掲げました。「ギャラリーを作る」「大阪・東京でイベントに参加する」「販路を作る」です。コロナで1年半思うように動けず、最後の目標は達成できませんでした(ササニシキは、収量32トンの販路も作り、僕が抜けても自走しています!)。地域おこし協力隊最後の年に、今のギャラリーになる場所を見つけて開業することになり、そのタイミングで宮城県の職員の方から「宮城県として初めて地域おこし協力隊を置くんだよ。竹田くんに、ぴったりだと思う。応募しない?」と連絡をいただき、今は県の地域おこし協力隊第1号として農泊を中心とした都会と田舎をつなぐ、関係人口づくりを行っています。今までは白石が活動範囲でしたが、今は宮城県全域となり、県の協力隊は1人だから大変です(笑)白石での地域おこしの活動を通じて様々な人と出会えて感謝しています。
もともと、陶芸などのアートに関心があったのですか?
全然です。仙台の陶芸教室に1年通い、あとは独学です。
出身は大阪だということですが、宮城で開業した理由は何ですか?
正直に話すと、大阪はライバル(競合)が多いからです。会社を辞めるにあたって大阪に帰ることも考えましたが、ここで覚悟を決めてやったほうがいいと思いました。それに、陶芸を始めて1年目で賞をいただいたご縁で、仙台のいろいろな先生と交流も生まれていたのも、宮城を選んだ理由です。
竹田さんのつくる器は美しいアオ色が特長ですが、青にこだわる理由は?
賞をとったときの作品づくりで、先生から「自分で釉薬を探してみたら?」といわれて、見つけたのがアオの釉薬でした。それまでは先生のところにある釉薬を使っていましたが、先生のアドバイスを受けていろいろ試しました。その作品を先生の奥さまにほめていただき、「自分の色は、アオだ」と思いました。それまで、織部焼、志野焼を真似ていたのですが、「アオ」だと気づいてからは作ることもなくなりました。今では12種類のアオをラインナップしています。早い段階で自分のスタイルが出来上がったのは、陶芸家として大きかったですね。
赤の器も美しいですね。
僕の陶芸は自然の美しさがテーマです。紅葉の赤も美しいので、赤を試作しました。たまたま試作品を出したら、あるお客さまの目に留まり、塩竈神社の茶席で使ってもらうことになりました。人とのご縁を結んでくれたことから「結―Yui―」というシリーズ名にしました。巫女さんの衣装の色にも近いですし、ピッタリですよね!
開業にあたってアシ☆スタを利用したのは?
もともとアシ☆スタの存在は知っていました。白石の協力隊をしていたときに「そろそろ起業しないとな」と思って相談に行ったのが最初です。起業にあたって、何をすればいいのか、特に経理の面が分からなくて。3回ほど相談に乗っていただきました。これまでサラリーマンだったこともあって、お金の運用について学べたのは大きかったです。
竹田さんには、もともと独立心があったのでしょうか?
なかったです(笑)。でも、「陶芸家になる」と決めてから、意識が180°変わったと思います。家具屋で働いていたのは、結婚とか引っ越しなど、人生の幸せな時に家具をお求めいただくからです。その幸せの瞬間にかかわりたいと思っていました。陶芸を始めて1年半、先生のご好意で百貨店でのクラフトフェアに参加しました。そのとき、お客さまが、陶芸を始めて間もない僕の作品を喜んで買ってくれました。その時「自分がつくったもので、人をハッピーにしたい」と強く思うようになりました。そこから陶芸家になるには、どうすれば良いか真剣に考え始めました。
竹田さんのこれからの目標は?
地域のいろいろな魅力を掛け算し、新しい価値を生み出したいです。最近では、地元の蔵王酒造とコラボしました。蔵王連峰を彷彿する山の稜線を外側に、見込みは星空が広がるようなデザインで、「蔵王-Zao-」というシリーズ名にしました。仙台の百貨店でお酒と一緒に販売会も行ったところ、僕の器が好きな方が蔵王酒造のお酒を購入してくれたり、蔵王酒造のお酒が好きな方が僕の器を買ってくれたり、良い相乗効果が生まれました。これからも地域の良いものを掛け合わせて、より大きな価値を生み出し、関わる人をハッピーにしたいです。
これから開業を目指す人にメッセージをお願いします。
「覚悟」をまず持ってほしいです。そして、どうすれば形にできるか考え、行動して欲しいです。僕の覚悟は、「陶芸家になりたい」ではなく、「陶芸家になる」です。「陶芸家になる」と決めて、どうすれば、陶芸家になれるかを考え、行動しました。
その際、僕は「ひらめきメソッド」というツールを使い、自分の思いを言語化しました。「ひらめきメソッド」は、曼荼羅とカードを使い、自分の思いを言語化するツールです。「仕事編」「人生編」など状況に応じて、様々なバリエーションがあります。僕は、陶芸家になるにはどうすれば良いか悩んでいた時、このツールを開発した方とたまたま出会い、陶芸家としての方向性が整理できました。今では、ひらめきメソッドの講師としても活動し、人生で悩んでいる方の力にもなっています。
開業には、良い意味でのやるぞ!という「思い込み」も必要だと思います。ただ「思い込み」は車のアクセルのようなものなので、それだけだと事故ります(笑)。皆さん、車で目的地にたどり着きたい時、アクセルとブレーキを使い分けますよね?「思い込み」がアクセルとすると、ブレーキは、「思いやり」です。「周りの人は、どう思うだろう?」「大丈夫かな?」「人に一度相談しよう」といった相手への「思いやり(配慮)」も持ちながら、ご自身が目指す目標にたどり着いてください。
開業者情報
- 屋号
- 蒼塵窯
- 代表
- 竹田 祐博
- 開業
- 2021年4月
- TEL
- 090-9117-8554
- 営業時間
- 10:00~17:00
- 定休日
- 不定休
- HP
- http://samidare.jp/so-zin/
- 所在地
宮城県白石市益岡町1−10−3