中小企業応援窓口オーエン

株式会社yuzuki|支援事例紹介#13

  • 補助金・助成金・給付金
  • 資金繰り・事業計画

2024.12.02

「杜の都のチーズケーキ工房 yuzuki」を運営する株式会社yuzukiでは、菓子製造の生産性向上を図るため、手作業の一部を機械化することにしました。その設備投資に「ものづくり補助金」を活用できないだろうかと、代表取締役の佐藤博紀さんはオーエンに相談。専門家のサポートによる事業計画策定や申請書類作成など、補助金採択につながったオーエンの取り組みをご紹介します。

オーエン活用のポイント

  1. 生産性向上のための課題分析や事業計画策定のアドバイス
  2. 補助金申請に必要な書類作成のサポート
  3. 補助事業実施に対する伴走支援

 01  どんな事業を行っていますか?

「杜の都のチーズケーキ工房 yuzuki」では、バリエーション豊富なチーズケーキやシフォンケーキなどの洋菓子を製造・販売しています。地産地消によって地域を元気にしたいという願いから、地元・宮城の食材を積極的に使用。仙台市内の農家さんから仕入れた枝豆で作るずんだ、宮城県産のイチゴやブルーベリーなど、地域の豊かな食材をケーキのフレーバーに取り入れています。

yuzukiのチーズケーキが生まれたきっかけは、料理人だった叔父のレシピを残したいという思いから。今は亡き叔父から受け継いだ味を多くの方に届けようと、2007年にチーズケーキの販売をスタートさせました。創業当時は実店舗を持たず、ECサイトと製造直売所のみでの販売でしたが、2014年にトレーラーハウスを利用した店舗を仙台市太白区東大野田にオープン。だんだんと商品の種類は増えていき、2018年からは仙台の老舗洋菓子店「嵯加露府(サカロフ)」の焼き菓子の製造・販売も引き継いでいます。

▲お話を伺ったのは、代表取締役の佐藤博紀さん。yuzuki の商品は店舗販売のほか、EC サイトでも購入可。
https://yuzuki-sendai.jp

 02  オーエンを利用したきっかけは?

コロナ禍でテイクアウト需要が高まり、yuzuki も急に忙しくなりました。当社では菓子の製造を全て手作業で行っていたので、次第にマンパワーも製造量も限界へ。特に 12 月から 3 月の繁忙期には対応が追いつかず、販売機会を逃すこともありました。

もっと従業員を増やすことも考えましたが、夏場は菓子の売り上げが落ちるため、その時期は人手が余ってしまいます。製造量の増減にも対応しながら、生産性を向上させたいということで、手作業の一部を機械化することを検討。製造設備の導入を目的に「ものづくり補助金」を利用できないか、オーエンに相談してみたのが始まりです。

yuzuki 人気 NO.1 の「お月様チーズケーキ」。この他にピースタイプ、スティックタイプのチーズケーキも販売。

 03  どのような支援を受けましたか?

大がかりな補助金の申請は初めてだったので、何から手をつければいいのか、どんな書類を用意すればいいのか、わからないことだらけでした。それを 1 から手厚くサポートしてくださったのが、オーエンに在籍している中小企業診断士の先生です。

ものづくり補助金は審査が厳しく、生半可な事業計画では採択されません。申請に必要な事業計画書においても、綿密に練り上げる必要がありました。そこでまずはオーエンの専門家と一緒に yuzuki の生産工程を見直し、製造プロセスの課題や機械化による効果などを分析。1 回の製造量や作業時間などを細かく数値化することで、設備導入後にどのくらい生産性が向上するかを明確にしました。

このように確認すべきこと、用意したほうがいい資料やデータなど、オーエンが提示してくださった宿題を一つ一つクリアしていくうちに、事業計画がまとまっていきました。私が下書きした申請書類も度々チェックしていただき、より良い形へとブラッシュアップ。補助金の審査ポイントを熟知した専門家のアドバイスがあったからこそ、採択につながったと感じています。

専門家のアドバイスによって、多くの経営課題が洗い出され、解決の道筋も見えたという佐藤さん。

 04  実際に専門家から支援を受けた感想は?

オーエンに相談する前から、ものづくり補助金に採択されるのは難しいと経営者仲間から聞いていました。補助金申請を代行してくれるコンサルティング会社に依頼する方法もありますが、私はできるだけ費用をかけたくなかったので、公的な相談窓口であるオーエンを利用。最初はダメで元々の気持ちでオーエンに相談に行ったところ、自分で申請書を書くこともできますよと伺ったんです。それからオーエンで補助金申請の手順や事業計画書の書き方を教わっただけでなく、経営やフードビジネスの専門家に事業計画の策定までサポートしていただいて、本当にありがたく思っています。

今回、オーエンにお世話になったことで、自分はこれまで経営のことを何も知らないまま事業を続けてきたのだなと痛感。専門家と一緒に事業計画書を作成していく過程で、事業の振り返りや生産工程の見直しができましたし、これまではあまり意識していなかったマーケティングの大切さも学べました。専門家のアドバイスで商圏範囲や潜在需要額などを数値化できたので、今後の販売促進や商品開発にも生かしていきたいと考えています。

最初は家族のみで始まった yuzuki。現在はスタッフ 17 名と共に「女性が一生活躍できる企業」を目指している。

 05  今後、どのようにオーエンを利用していきたいですか?

ものづくり補助金に採択された後、6 種類の機械を導入しました。これまで手作業でカットしていたスティックチーズケーキは、機械化によって効率化を実現。この他にもクッキーの自動成型、プリンの焼き時間の短縮など、機械導入のおかげで生産性は大幅に向上しました。以前よりも余力が生まれたぶん、期間限定で販売しているプリンを常時扱えるようにしたいと考えています。

オーエンへの相談を通じて、大きな補助金を受給できたうえに、経営者として勉強になったことがたくさんありました。その学びを今後にどう活用していくかは、これからの自分の頑張り次第。まずは今回策定した事業計画をしっかり遂行できるように、できる限り努力を重ねていきたいです。もっと先のことを考えるなら、現在は店舗と工房が少し離れているので、いつか工房併設の大きな店舗をつくるのが目標。その準備を進められる時が訪れたら、またオーエンの専門家の皆さんにご相談できればと思っています。

製造機械を導入した今も手作業にこだわる工程は多く、丁寧な菓子づくりが美味しさにつながっている。

支援担当者からコメント

yuzuki様は以前から青葉スイーツ事業などでご協力いただいておりましたが、今回は生産性向上のためのものづくり補助金に関する相談となりました。支援では、同社の菓子作りにかける思いや他社商品との違いを明確にしたうえで、技術面では設備導入による菓子製造プロセスの改善を、事業化面では商圏範囲と潜在需要額および市場シェアの算定を行い、想定販売先も明確化しました。ものづくり補助金は機械加工や半導体など高度な技術分野の申請が多く、小規模な食品製造業者が自力で申請書作成に取り組むのは難しい補助金です。今回は、同社の生産性向上にかける強い思いと、当事業団の専門家2名の支援が奏功し、採択に至ったものと思われます。

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今回ご紹介した企業

株式会社yuzuki

仙台市太白区東大野田を拠点に「杜の都のチーズケーキ工房 yuzuki」を運営。宮城県産の食材を生かしたケーキや焼き菓子を扱うほか、2018年からは老舗洋菓子店「嵯加露府」の商品も製造・販売を引き継いでいる。

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インタビュー・ライティング/三日月エディット 野原 巳香
撮影/渡邉 樹恵子