2020年4月、46年の歴史に、いったん幕を下ろした人気ラーメン店「国分町味よし」。2021年2月にキッチンカーでの復活を遂げました。オーエンでは、新しい店舗形態に生まれ変わるにあたり、さまざまなお手伝いをさせていただきました。復活までの道のりについて、氏家夫妻にお聞きします。
01 店舗を手放すことになりましたが、それでもやはり、お店の味を届けたい気持ちは変わらなかったのでしょうか。
国分町味よしは、先代である父が1975年に開業しました。それから半世紀近く、飲み会の後の〆の一杯として、多くの方々にご来店いただいていました。
ですが、不況による客足の変化になんとか対応していたところに、コロナ禍の外出自粛が大きな打撃となり、廃業せざるを得ませんでした。かつてないほど人出が減少し、先行きが見えないまま営業を続けるのは困難だという結論に至ったんです。
実は、キッチンカーで出店できたらいいよね、という話は、震災後にしていたことがあります。炊き出しなどが必要なときに、自由に動ける手段があったらいいよね、と。店を閉めたあと、この先どうするかを夫婦で話し合いまして、やはり細々とでもいいから店をやりたい、味よしの味噌ラーメンをこれからもお客様に食べてほしい、という思いを互いに再確認しました。キッチンカーなら「三密」を避けやすくこれからの営業スタイルにも適しているのではと考え、再起をかけることにしたんです。
キッチンカーの厨房で鍋を振るう氏家さん
02 再スタートを決めたのは2020年の7月ごろでしたよね。オーエンには、どんな経緯で相談にいらっしゃったんですか?
再スタートを切るとはいっても、キッチンカーの運用はまったくの初心者です。そこで、とにかく相談をしてみようと区役所で尋ねてみたところ、オーエンを紹介されました。今振り返ると、やると決めてすぐ足を運んで本当に良かったと思います。
オーエンでは、中小企業診断士の玉置さんに支援を担当いただきました。キッチンカーを作るにあたっては、キッチンカーの運営経験のあるイベント会社を教えていただきました。全然知識がなかったので、ノウハウがある方とのつながりができるのは、とても心強かったです。資金の相談に関しては、日本政策金融公庫がいいのではとアドバイスをいただき、経営計画を練ることになりました。
オーエンに計画案を持ち込んで、計算方法の提案や、ラーメンの種類ごとの売上シェアの算出をしていただいたりして、地道に修正を重ねました。アドバイスいただきながら、月々の利益の割合をもとに利益の見通しや返済見込みも検討することができ、政策金融公庫の審査はなんと一発でOKをもらったんです。公庫の担当者に「ここまで細かい計画はなかなかない」とお褒めの言葉までいただけて、感動しました。
また、資金調達にはクラウドファンディングを活用しましたが、利用するサイトの検討から、リターンや内容の考え方、仙台市の補助制度まで、丁寧にアドバイスをいただきました。クラウドファンディングを通して“味よし復活”を事前に周知にできたことから、多くのメディアにニュースとして取り上げていただき、好調な再スタートを切ることができました。何から何まで助けられたなと感謝ばかりです。
03 実際にキッチンカーで営業を開始して、感じていることはありますか?
イベント出店を皮切りに、4月28日からキッチンカーでの営業を本格始動しました。実際にやってみると、キッチンカーならではの難しさを感じますね。キッチンカーでは仕込みができないので、店舗のときより手間がかかったり、意外とガス代がかかったり。密にならない形態なのでコロナ禍の影響はうけにくいですが、売れ行きが天候に左右されることも多く、閉店時間を何時に設定すれば売り上げが最大限になるのかというのが、最近の悩みです。
まだまだ試行錯誤の段階で、やっていけるのかと不安になることもあります。ですが、これからもっと味よしキッチンカーのことを知っていただければきっと大丈夫、と希望を持って頑張っています。
閉店から再始動を経て、ずっと味よしを応援してくださるお客様がいるありがたさを実感する日々です。キッチンカーでの営業を決意した頃にTwitterアカウントを作ったのですが、一晩で1,000人の方からフォローされ、うれしさと同時にとても驚きました。それに、今来てくださっている方の半分以上は昔からのお客様です。ラーメン一杯のために遠くからお越しになる方もいらっしゃって、本当に励みになっています。
あの味が再び!香豊かな味噌のスープがすきっ腹に沁みます…
04 事業に取り組む皆さんにメッセージをお願いします。
開業や事業の再構築で悩んでいるのであれば、とにかくまずは相談に行くこと。それがとても大事なことだと思います。私たちはすぐに相談に行ったことで、結果的に4、5ヶ月で融資やキッチンカーでの営業にこぎつけることができました。世の中がどう変わるか不透明だからこそ、自分たちだけで悩み続けるくらいなら、行動に移した方が良い結果につながると思います。
状況次第ではありますが、これからはもっとイベント出店をして、各地のお客様にラーメンを食べていただきたいですね。味よしならではの風味を生かしたアレンジメニューなど、少しずつ挑戦の幅を広げていきたいと思います。
支援担当者から支援制度のご案内
今回の味よしさんの事例では、すぐにオーエンに相談されたことが良い結果につながりました。どんなささいなご相談でも大丈夫です。どうぞお気軽にお問い合わせください。
支援担当スタッフ 玉置 光好 担当コラム
(取材・ライティング:沼田 佐和子)