令和4年に創業90年を迎えたオーダー染め物専門店「ほまれや」は、その節目の年にオリジナルのエコバッグ「ほまれのふくろ」を発売しました。この商品開発をサポートしたのが、仙台市産業振興事業団が運営する「オーエン」です。ほまれやは2年連続で「新商品/新サービス開発支援」に採択され、令和5年には「ほむら前掛け」を製作。各商品の開発経緯や支援に対する感想を、ほまれや取締役の土田暢子さんに伺いました。
オーエン活用のポイント
- マーケティング戦略に基づく商品開発
- 新商品のデザイン制作やパッケージ考案の専門家支援
- 商品の魅力を効果的に伝える販促ツールの作成
01 どんな事業を行っていますか?
昭和7年に「江刺屋」の名で創業し、「ほまれや」となったのは昭和27年。創業した頃は仙台に日本陸軍の第2師団が置かれていて、そこに納める軍服や雑貨などを扱っていたようです。戦後に染め物や繊維製品を多く取り扱うようになり、現在では染め物のオーダー製作が中心となっています。
デザインや縫製も自社で行っているため、幅広いご要望にお応えすることが可能です。オーダーや用途に合わせた生地選び、染め方などもご提案しています。主な製品としては、祭りやイベントなどで使われるはっぴやユニフォーム、商店ののれんや酒蔵の前掛け、スポーツの応援に用いる横断幕など。お客様のお名前や企業名を入れたノベルティ、記念品などもお作りしています。
02 オーエンを利用したきっかけは?
オーエンを知った最初のきっかけは、コロナ禍が始まる2年ほど前。仙台市産業振興事業団が主催する「新東北みやげコンテスト」の展示を見に行き、その受賞商品を紹介しているウェブサイト「暮らす仙台」も時々閲覧するようになったんです。そこで商品開発の支援窓口であるオーエンの存在も知り、ずっと気になっていました。
その後のコロナ禍によって、ほまれやではオーダー品の受注がどんどん減少。これまではオーダー製作がメインでしたが、一般消費者向けの汎用品も必要ではないかと考えるようになりました。しかし社内のスタッフだけでは年齢層も意見もバラバラで、どんな商品がいいのか検討しても一向に収拾がつかず…。それなら外部の専門家の力をお借りしてみようと、「新商品/新サービス開発支援」の申請を行いました。
03 どのような支援を受けましたか?
ギフト需要に対応できるような手拭い商品の開発を考えていましたが、定番の手拭いなら既存製品もたくさんあります。それらと差別化できる手拭い商品を作れないだろうかと、マーケティングやデザインの専門家の皆さんに相談したところ、「エコ」や「サステナブル」を訴求する商品を開発することになりました。そこで誕生したのが、手拭いで作ったエコバッグ「ほまれのふくろ」です。このあずま袋は、通常よりも長い手拭いを切らずに縫製したもの。使い込むうちに汚れたり飽きたりしても、縫い目をほどけば1枚の手拭いに戻ります。
ギフトや土産品としてお買い求めいただけるように、デザインやパッケージにも工夫を凝らしました。手拭い生地のデザインには、日本伝統の縁起柄や仙台ゆかりのモチーフを使用。売り場に並べた時も見映えするように、パッケージには自立する角底箱を採用しました。出来上がった商品を改めて見ても、とても素敵なデザインに仕上げていただいたと感謝しています。
令和4年度の「新商品/新サービス開発支援」で「ほまれのふくろ」を開発し、続く令和5年度も同支援のお世話になりました。令和5年度に開発したのは、アウトドア好きの男性をターゲットにした「ほむら前掛け」。ほまれやが長年製作してきた帆前掛けの知識と技術を生かしつつ、バーベキューや芋煮会などで使いやすいように防炎加工を施しました。
この前掛けの製作に入るにあたって、マーケティングプロデューサーの大志田さんから「まずは市場調査が必要」だとアドバイスをいただきました。世に出ているアウトドア用の前掛けはどれだけあるか、サイズ感や形はどうか、値段はどのくらいか。既製品の分析によって長所や短所を把握でき、より良い商品作りにつながりました。ポケットの位置や大きさ、前掛けの長さなどにこだわったことで、実用性の高い前掛けが完成。昔ながらの前掛けらしい雰囲気も残しつつ、とても面白いデザインの商品ができたと感じています。
ほまれのふくろ(写真左)とほむら前掛け(右)は、別のデザイナーが担当。各商品のコンセプトやターゲット層に合わせて、オーエンが外部デザイナーを紹介。
04 実際に専門家から支援を受けた感想は?
2つの商品の開発を振り返ってみると、自社だけではここまでたどり着けなかっただろうなと思います。こんなものを作りたいという漠然とした希望はあっても、実際に自分たちの力だけで形にするのは難しいこと。専門家の皆さんはこれまでもいろんなものを作って、いろんなものを見てきているので、その蓄積から生まれるアドバイスは的確ですし、アイデアの引き出しも豊富です。
また専門家のアドバイスを受けたことで、商品開発にはターゲット層の設定も大切だと学びました。ほむら前掛けで言えば、事前相談の時点では飲食店向けの前掛けを作ろうと考えていました。しかしそれだと販路が限られるということで、より需要が見込まれるアウトドア用の前掛けに変更。アウトドア好きの男性をターゲットに設定してから、デザインの方向性や販路の選定も明確になりました。
さらに商品のPRについても、勉強になることが多かったです。初めて経験したのが、商品のロケーション撮影。ほむら前掛けの使用イメージが伝わりやすいように、実際に河原で芋煮やバーベキューをしながら撮影を行いました。その撮影を提案してくださったのは、オーエンのビジネス開発ディレクター・渡邉さん。これまで自社で商品の魅力を伝えようとすると、文章だけで長くなっていましたが、今回の写真ならひと目で訴求が可能。準備の手間はかかりましたが、アウトドアのイメージで撮影できてよかったと思っています。
前掛けの撮影を行ったのは、 仙台市太白区の「秋保木の家」。使用イメージがひと目で伝わる商品写真に仕上がりました。
05 今後、どのようにオーエンを利用していきたいですか?
おかげさまで「ほまれのふくろ」と「ほむら前掛け」は「新東北みやげコンテスト」でも入賞できましたし、海外で日本の商品を販売しているショップのバイヤーさんからも高く評価していただけたので、今後はインバウンド需要への対応やギフト・ショーへの参加なども検討したいです。オーエンには販路開拓・販売促進の専門家もいらっしゃるので、ご相談できればと考えています。
当社に限らず、おそらくどの事業者も「自分たちに足りないもの」を常に抱えているのではないでしょうか。日々の業務が忙しいと、何年も寝かせている課題やアイデアもあるかと思います。それを形にする道筋を作ってくれるのが、オーエンです。商品開発のスケジュールや私たちへの宿題も提示してくださったので、短期間で新商品と販促ツールを完成させることができました。
デザイナー 渡邉 樹恵子
支援担当者からコメント
商品づくりは、最初にアイディア出し、ブレストの時間を多くとります。ときには雑談になってしまうことも多々ありますが…そこから拾えるアイディアもあるのです。実際、ほまれやさんの商品は雑談のなかからヒントを得たところが大きいです。
アイディアをまとめ、大枠となるコンセプト、ターゲットを一緒に考え、商品におとしこみます。自社だけではついついひとりよがりになりがちな商品づくりを、各専門家が客観的な目線と立場でアドバイス、時には一緒に伴走します。ノウハウが身につければ次回からは自走できるようになると思いますので、まずはご相談ください。
今回ご紹介した企業
インタビュー・ライティング/三日月エディット 野原 巳香
撮影/渡邉 樹恵子
記事中でご紹介した支援メニュー
新東北みやげコンテスト
東北の地域産品を有する中小企業等の販路開拓を支援するため、新しいみやげの発掘、バイヤーや消費者に向けたPRの支援、東北を代表する“売れる”みやげの産出を目的として「新東北みやげコンテスト」を開催しています。
新商品/新サービス開発支援
コロナ禍を乗り超え、付加価値の高い新商品またはサービスの開発を行おうとする事業者を対象に、マーケッターやデザイナーなど複数の専門家によるチーム支援を実施します。