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株式会社永勘染工場|支援事例紹介#6

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  • 資金繰り・事業計画
  • 販路開拓・販売促進
  • 新商品開発・新事業展開

2022.12.26

株式会社永勘染工場|支援事例紹介#6

創業135年を迎えた南染師町の「永勘染工場」。オーエンの運営団体である仙台市産業振興事業団には15年以上訪れ、事業展開について相談を続けています。コロナ禍になってからは、補助金を活用しながら「デザインシミュレーター」や「サイクリングキャップ」などの新事業を次々にリリース。伝統を守りながら、新しい分野にチャレンジしています。永勘染工場5代目の背中を押す、多面的なサポートについて、お話を伺いました。

オーエン活用のポイント

  1. ウェブシステムへの専門的なアドバイス
  2. 新商品開発の伴走支援

 01  どんな事業を行っているか教えてください。

当社は、明治20年創業の染工場です。初代「永野勘兵衛」が現在の一番町に工場を開いたのが始まりで、私で5代目になります。当初は、藍染めの半纏を中心につくっていたようですが、その後、のれんや大漁旗も製作するようになりました。仙台の老舗店のなかには、明治、大正時代から当社の半纏やのれんを使っていただいているお店もあります。

父の代、私の代になってからは、インターネット販売にも力を入れ、インクジェットプリントやシルクスクリーンなどを用いた製品も扱うようになりました。本染の良さを伝えながら、時代に合わせてさまざまな商品を展開していきたいと考えています。

永勘染工場で制作している染め物の数々。

 02  オーエンを訪れたきっかけは何ですか?

(運営団体である)仙台市産業振興事業団とは、もう15年以上のお付き合いになります。

私は23歳の時に永勘染工場に入社したのですが、社会人経験もなく、会社経営についてもまったく知識がありませんでした。当時当社は、父が営業をして、母が染めや縫製を行う家族経営の会社で、染め物の需要も減少している時期でした。私は、つくる技術があっても売れないといけない、市内のお客さまだけでなく日本中に販路を広げないといけない、インターネット販売にも事業を広げたい、と考えてはいたのですが、何から着手していいか分かっておらず…。そんな時期に、セミナー告知を見て、「ここに行けば何か教えてくれるかも」と参加したのが、仙台市産業振興事業団を訪れたきっかけです。

永勘染工場の五代目、永野仁輝さん

 03  実際にどんな支援を受けていますか?

以前から、ECサイトの制作方法に迷ったときや新しい事業を思いついた時などに相談に訪れていましたが、特によく通うようになったのは、新型コロナウイルス感染症が拡大してからです。当社の主力商品でもある手ぬぐいや半纏は、イベントやお祭りに合わせて発注いただくことが多いのですが、コロナ禍でイベントがほとんど中止になり、売り上げが減ってしまいました。そこで、なんとか気軽に手ぬぐいや半纏を注文してもらえるようにできないかと考え、補助金を使って「デザインシミュレーター」を開発しました。

ウェブ上のシミュレーターを使って、手ぬぐい、のぼり、半纏などのデザインを実際につくってみることができるシステムなのですが、私はウェブの仕組みに詳しくないため、オーエンの専門家のアドバイスは、非常に役立ちました。

「デザインシミュレーター」の操作画面。簡単にデザインを試せます。

シミュレーターは、お客さまに気軽にデザインを考えていただくという役割のほかに、当社とお客さまのメールのやりとりを減らすという役割も想定していました。だから、どうしても、システムの作り方が「自分たち目線」になってしまって…。こんな機能もつけたい、これもあったほうがいいと、ゴチャゴチャしたシステムになってしまっていました。

それを「シンプルにしたほうがいいですよ」とアドバイスしてくださったのが、ITの専門家の高木さんです。お客さまが楽しんで使えるように機能を整理してくださり、デザインデータの保存機能を付けたほうがいいのでは、など、利用者目線のアドバイスをいただきました。実際にシステムをリリースしてみて、お客さまの反応を見ると、やはり高木さんの助言は正しかったのだなと実感しています。


一枚一枚手作業で布を染める様子。色もデザインごとに配合を変えて作り上げます。


 04  仙台市の中小企業チャレンジ補助金を使って永勘染工場さんが開発した「サイクリングキャップ」もオーエンが伴走支援しました。アドバイスはいかがでしたか?

「サイクリングキャップ」は、仙台のデザイン会社さんと一緒に開発した商品です。市場調査をしたり、デザインの方向性を決めたり、縫製工場を探したり、ゼロから自分たちで作りました。新商品を開発するのは、なかなか大変なことで…。普段の業務の合間を縫って進める必要がありますし、本当にこれでいいのかと道に迷うこともありました。そういう時に、オーエンの専門家の意見が聞けるのは、大変ありがたかったです。

次の打ち合わせの期日が決まっていると、この日までに進めないと!と頑張ることができますし、それに対して、客観的なアドバイスをいただけるのも大変参考になりました。的確で厳しいお話をいただくこともありますが、あくまで強制ではなく、方向を示していただいているという印象です。訪れるたびに背中を押してもらえる気持ちになり、頑張らなくてはと気持ちを新たにすることができました。

柄からオリジナルでデザインした「染 CYCLING CAP」。

 04  今後、オーエンをどのように利用していきたいか教えてください。

オーエンには、事業全体のことから、デザイン、広報、商品開発など、さまざまな分野のプロフェッショナルが所属しています。皆さん普段は独立して自分たちでお仕事なさっている人なので、知見も広く、とても信用できます。

当社ではこれからも、伝統を守りながら新しいことにチャレンジしていかなければなりません。そういう時に有益なアドバイスをいただける場として、引き続き利用を続けたいと思っています。

工場にて。挑戦の気持ちを忘れない永野さん。

中小企業診断士・ITコーディネータ
高木 順

 担当コラム

支援担当者からコメント

永勘染工場さんはとても長い歴史を持つ老舗企業にありながら、常にチャレンジの姿勢で新しい取り組みに向き合ってきたというところがとてもすばらしく、敬意と共に伴走させていただきました。お話を伺うと、今ほどネット販売が世の中に浸透していないころからネット販売にも取り組んでこられ、今回も補助金等の支援制度を活用いただきながら「デザインシミュレーター」にお取り組みになられました。

ITの技術面は専門家サイドでフォローさせていただけますが、チャレンジの姿勢は事業者様の意向次第です。中小企業の皆さまの「やりたい!」を全力で後押し、お手伝いさせていただきますので、ぜひオーエンにご相談ください。

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今回ご紹介した企業

株式会社永勘染工場

江戸時代初期に整備された南染師町に店を構える染工場。型を通して染料を布に染み込ませる「本染め」などの伝統技法を用いて、手ぬぐいやのれん、のぼり、半纏などをオーダーメイドで製作しています。

インタビュー・ライティング/沼田 佐和子
撮影/渡邉 樹恵子


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