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仙台陸運株式会社|デジタル化推進補助金活用事例#3

デジタルタコグラフの導入によるドライバーの動態管理、労務管理、安全管理の運用開始

「仙台陸運株式会社」は昭和29年、丸中運輸株式会社として運送事業をスタート。その後、昭和42年に社名を変更し今年創業70周年を迎えます。事業拠点は若林区卸町と宮城野区港に2カ所あり、卸町の仙台支店では食品、消火器、ポンプなどを取り扱っています。仙台港営業所は、セメント事業を牽引するUBE三菱セメント株式会社の仙台サービスステーション(出荷拠点)として、セメント輸送を専門に行っています。

同社が仙台市地域企業デジタル化推進補助金を活用したのは、仙台港営業所にあるバラセメントを運ぶ粉粒体運搬車へのデジタルタコグラフ(以下デジタコ)の導入。「バラセメント車は全部で15台あるのですが、今回導入したのはそのうちの5台。現在はデジタコとアナログタコグラフ(以下アナタコ)を併用している状態です」と、総務管理部副部長の古川勝英さん。現時点でトラックにデジタコの装着義務はありませんが、「貸切旅客バスが法改正により義務化となったことを踏まえ、順次切り替えていきたいです」と話します。

令和6年4月1日から運送業界におけるトラックドライバーの労働時間に上限が設けられます。これに伴う、いわゆる2024年問題への対応も含め、加速するデジタル化にどのように取組んでいくのか、補助金活用の経緯とともに伺いました。

導入ツール・システム

  1. バラセメント車(粉粒体運搬車)5台にデジタルタコグラフを導入

取り組みの効果

  1. データ確認の時間削減
  2. より多くのデータが集計可能になったことで、走行中の事故削減や燃費の改善、車両の動態管理の効率化などに向けた環境を整備
「今回の仙台市の補助事業をはじめ、トラック協会など各種補助金を利用して順次デジタコを導入していきます」と総務管理部副部長の古川勝英さん。

 01  補助金を活用してどのような事業を行いましたか?

仙台港営業所にある15台のバラセメント車にはアナタコを搭載しており、すべて手書きの日報で車両の運行管理をしていました。アナログの運行記録計でも法令違反ではないのですが、世の中がデジタル化の流れとなっていることもあり、先ず5台に補助金を活用してデジタコを導入しました。先行して導入した5台で、ドライバーの動態管理、労務管理、安全管理の運用を行い、その効果を確認し残り10台への導入を計画的に進めていきます。

バラセメント車に搭載されたデジタコ。ドライバーはボタン操作のみで日報を書く手間がなくなる。

 02  どのような課題があり、補助金を申請しようと思ったのでしょうか?

先年の貸切バスの横転事故を受け、令和5年10月の法改正で貸切旅客バスにデジタコ使用が義務付けられましたが、今後トラックに対する義務化の範囲拡大も進むことが予想されます。この法改正がアナタコからデジタコへの切り替えを考えるきっかけの一つでした。

ドライバーの手書きによる紙の日報だけでは、仕事の取組み方や休憩の取得状況、そのドライバーの特性や運転傾向を踏まえた運転の評価などを「公平に見える化」することは難しいのが実状です。この状況では、2024年問題を視野に入れた社内教育や運転指導、残業時間の把握などといった取り組みができにくいという課題がありました。

卸町にある食品などの運送トラックにはすべてデジタコを搭載済みなこともあり、社内では2年ほど前からバラセメント車への導入を検討していました。しかし、デジタコはアナタコに比べて導入コストも高いことが難点なので、補助金を利用して少しでも予算を圧縮できればと考え申請しました。上限額の関係で、今回は先行して5台の導入となりました。

 03  課題を改善する上で、大変だったことについて教えてください。

従来のアナタコが記録するのは法定三要素とされている運転時間、速度、走行距離で、測定したデータはチャート紙と呼ばれる専用の用紙に記録されます。そのデータ分析は管理部門が行うのですが、専門的な知識が必要なため読み取るのに手間がかかります。

デジタコは運転時間、速度、距離の他、急加速・急減速・急ハンドルといった危険操作や発生回数などさまざまなデータをメモリーカードに記録します。荷積みや荷卸し、休憩の時間もボタンを操作するだけで記録され、ドライバーは日報を記入する必要がなくなります。

デジタコの便利さを実感しつつも、現在は全車両への導入が進んでいないので、運転状態の管理や時間の集計はアナタコをベースに手作業で行わざるを得ません。残念ながら、まだ管理者側の作業効率が良くなっていないのが正直なところです。オペレーターの業務負担を見ながら、関係者の協力を得て進めています。全車両導入まではこの業務管理がやや煩雑になりますね。

また、電子化により、速度違反や急加速・急減速などの運転情報が記録され点数化されるため、ドライバーの指導教育に役立つ反面、ドライバーからは、ボタン操作が面倒だとか、運転を管理されている感じが強まる、などの反発も想定されます。課題改善に取り組むと同時にデジタコ導入の意義をドライバーに理解してもらうことが大切だと考えています。指導すること自体が目的ではなく、数値化により意識してもらうことで安全運転につながれば良いわけですし、優良な運転はそれを高く評価する客観的な材料にも活用できるとも思っています。全車両搭載が完了したら、本格的にドライバーにもフィードバックしていく予定です。

左)仙台支店業務課長 久冨大樹さん
中)常務取締役部長兼UBE三菱セメント事業部仙台SS所長 落合榮一さん
右)副部長兼UBE三菱セメント事業部仙台SS副所長 横山寛司さん

 04  ITツールの導入によってどのような成果が得られましたか?

デジタコで記録された情報により、ドライバーの運転状況や労働状況を正確に確認することができ、その結果について細かくデータ分析できるようになりました。解析に要する時間も、アナタコでは1台10分程かかっていましたが、デジタコは約2分で集計できます。配車担当者は、結果として1日当たり1時間15分の業務時間削減となりました。

また、急発進や急ブレーキ、高速度なども記録情報によりデータ分析できるようになり、事故につながる危険性のある運転に該当したドライバーへの面談指導が可能になりました。安全運転の周知徹底と事故削減に向けた指導体制作りができるようになりました。急加速・急減速時に警告音が鳴るように設定することで、ドライバーに聴覚的に注意を促し、結果として少なからず燃費向上にもつながっていると思います。

アナタコでは確認しきれなかった車両の細かい動態管理が可能となり、運転状況もデータで可視化できることで、その分析に基づくドライバーの運転の癖や問題点などを具体的に注意指導することができるようになりました。法定三要素に加えて、位置情報や急加速、急ブレーキ、アイドリング情報、エンジンの回転数や空車での走行区間も記録可能となり、多くのデータを集計することで事故防止や安全運転教育などに活用できます。

さまざまな情報がデジタコに記録されデータ解析が可能。ドライブレコーダーと併用すれば画像情報まで把握できる。

 05  最後に、今後の展開について教えてください。

2024年問題の対応としては、バラセメントという商材の用途から、早朝から午後までの運送がほとんどで、労働時間も大きく増減しないことから、そこまで大きな影響は懸念されません。ただ、荷主さんの要望で遅い時間を指定されることもあります。拘束時間を減らす対応として、できるだけ午前中に運送が完了できるよう荷主さんにもご協力いただくようにしています。デジタコが全車両に設置されれば、クラウドでリアルタイムに状況を把握できるので、その辺の調整も上手くできると期待しています。

デジタコ未設置の車両10台については、3カ年計画で5台ずつ各種補助金を利用して導入していく予定です。今後の方向性としては、デジタコ導入で集計可能となった運行記録をドライバーの教育に役立て、法令を守るとともに、省燃費走行を定着させること、環境にやさしく経費を抑えることができるよう、運用の仕方を考えながら進めていきます。

企業概要

仙台陸運株式会社

事業内容:運送業(セメント、食品、消火器、ポンプ)
https://rikuun44.jimdofree.com/

(総務管理部・仙台支店)
〒984-0015 宮城県仙台市若林区卸町4丁目4番地
TEL.022-782-7272

(UBE三菱セメント事業部)
〒983-0001 宮城県仙台市宮城野区港4丁目3-2
TEL.022-258-1577


デジタル化推進補助金活用事例

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