雑貨のはなし│AITTA

2024年5月29日

美しき着物の世界を仙台から発信―AITTA―

ヴィンテージの着物や帯をはじめとする日本の伝統的な織物に新たな息吹を吹き込むAITTA。
2014年に誕生したこのブランドは、間もなく10年を迎えます。

代表の高嶋マチ子さんは、「私は30歳から着付けの仕事に従事してきました。その中で、お母さまやおばあさまから受け継いだ着物を持て余している方が多く、悩んでいるということを痛感してきました。また、私自身祖母が他界した際たくさんの着物を遺してくれたのですが、『これを活かさなくては!』と強く思い、着物が衰退する一方でどうにか多くの方に着物を日常的に楽しんでいただく方法はないかと考えました。それがAITTAを立ち上げたきっかけです」と話します。

子どもの頃から着物に親しんできたとはいえ、洋裁の経験はゼロだったという高嶋さん。
「洋裁もデザインも本格的に学んだことはありませんでしたが、人とちょっと違うオシャレが好きでした。幸運なことに、着物を洋服に仕立て直し活かしたいという漠然な想いに応えてくれる腕の良い服作りのプロたちと巡り合うことができ、スタートさせることが叶いました。最初はお客さまのお宅へ伺い、お持ちの着物を見せて頂いた上で『こういったものはいかがでしょうか』と提案するようなセミオーダーメイドでお洋服を仕立てていたんです」


写真:大島紬からできたコート

着物からお客さまのイメージに合った洋服を丁寧に仕立てる…。そんなAITTAの手しごとにピンチが訪れたのは、2020年のこと。
「コロナの影響と母の介護で、今まで続けて来たことが全てできなくなってしまいました。それで、初めて(仙台市産業振興)事業団さんに相談して、『ホームページの再構築やオリジナル商品をつくり、海外へのアプローチやオンラインでの販売をしましょう』というアドバイスを頂きました」

それをきっかけに「海外進出支援企業である仙台箪笥の老舗ブランド、門間箪笥店さんに橋渡しをしていただき、OBIランナーを香港にてテスト販売することに。
アジア圏の富裕層をターゲットに、仙台箪笥や工芸品と共に着物の帯を使ったテーブルランナーをご提案していただくために託しました。
現地の方の反応や好み・要望のリサーチ、輸出や翻訳の面で協力を得られ、極力負担の少ない形で海外へのアプローチができることを実感。
今後はラグジュアリーな着物服の販売を視野に、台湾・香港・シンガポールなどのアジア諸国へアピールしていくつもりです」


写真:リバーシブルのジャケットは、AITTAのセンスが光る逸品。男性だけでなく、女性もカッコよく着こなせます

そして、その頃に偶然出会ったのが、アパレルブランドの量産商品の設計から生産までを担うOEMを生業としている現スタッフ。高嶋さんのビジネスに新たなきっかけを与えてくれました。それまでオーダーメイドだけだったAITTAにレディメイド(既製服)がラインナップされたのです。


写真:着物の裏地を裂いて編んだセーター


「私が培ってきた仕立て服のノウハウと、縫製工場で生産する製品づくりを掛け合わせて、オーダーメイド服と既製服の両立をはかれています」

洋服地のみを手掛けてきたスタッフにとっては、ほぼ初めて手に取る和服地。
スタッフ曰く、「日本が生み出した和服地というものはこんなに美しいんだ!と感動するのと同時に、生地幅が狭いため型紙づくりが全く異なる上、主な素材もシルクなので、お互いの経験を結びつけるまでに四苦八苦した」そう。

高嶋さんがやってきた仕立て服の仕事と、縫製工場で生産される工業製品の仕事は少なからずかけ離れた工程の差がありました。
「私は洋裁技術に関する知識が乏しいので、『ここをこうしたい』とデザイン先行で話をするので…」と苦笑しながらも、「ものづくりの奥行きを理解し、製品毎に見合ったつくり方を選択すること。そこでまたひとつ学びを得ました」と、話します。


写真:佐野地織でつくった名刺入れ。味があります


最近では、宮城県南部にある丸森町の伝統工芸である佐野地織を使用した商品も展開しているAITTA。
今後、目指す先について伺いました。
「着物地をはじめとする日本の織物の素晴らしさを、もっともっと多くの方に知ってもらいたいというのが私たちの願いです。日本国内の方々はもとより、海外のお客さまにも手に取っていただいて、日本の布の可能性を感じていただけたら」と、高嶋さん。

AITTAの商品は現在、青葉区錦町にある「木香テラス」内の「GALLERY Meguru」で購入することが可能です。
洗練された着物服や小物にぜひふれてみてはいかがでしょうか?


AITTA(GALLERY Meguru)

所在地 981-0952 仙台市青葉区錦町1−13−7 長刀丁アネックス1F 木香テラス(モッコウテラス)
営業 木・金・土曜日 11:00〜17:00
URL https://aitta.jp/