まるごと牡蠣ソースセット
FISHERMAN‘S KITCHEN

FISHERMAN‘S KITCHENは、仙台市産業振興事業団が主催する
第11回新東北みやげコンテストの受賞企業です。
「第11回 新東北みやげコンテスト」の授賞式。
最優秀賞のアナウンスがあると、FISHERMAN‘S KITCHENの阿部和也さんは、驚きに満ちた表情で立ち上がります。表彰のためにステージに上がると両手を挙げてガッツポーズをつくり、全身で受賞の喜びを表現していました。

それからおよそ2カ月後。
南三陸町にあるFISHERMAN‘S KITCHENに阿部さんを訪ねました。
「本当に受賞できると思ってなかったので、きっと僕が一番驚いていたし、何を話したかも覚えていないんですよ」と笑う阿部さん。
もともと牡蠣・ワカメ漁師の家に生まれた阿部さんでしたが、大学卒業後は広告の道へ。
「仙台の広告会社で働いていて、結構忙しかったんです。プレイングマネージャーだったこともあって、いろんな案件をうまく裁ききれず、メンタルがやられて体調を崩してしまいました。その時、ふと振り返ると息子が生まれた年だったのに、息子のことあんまり知らないのに気付いて、実家に戻ることを決めたんです」

こうして実家で牡蠣養殖を始めたのが、4年前のこと。
「僕が戻って来てからすごく感じたのは、海の環境がものすごいスピードで変わってきているということ。海水温が上がって、伊勢海老とか南の魚が獲れだすし、牡蠣も死滅が多くなってきた。データによると、養殖した牡蠣の4割、ひどいところだと6割死滅してしまう。半分が死滅するっていうことは、売り上げもそれだけ落ちてしまうということですよね。牡蠣の販売をただただマーケットに委ねて“待ち”の姿勢でいるよりも、付加価値をつけて販売できないか…と思って開発したのが、この『まるごと牡蠣ソース』なんです」

開発にあたって、阿部さんは中学時代の同級生で銀鮭漁師兼シェフである佐藤将人さんに協力を要請します。
「レシピを考案してもらったのですが、彼が一切妥協しないことや、僕も無理なく進めたいという思いがあったので、開発までに1年半くらいかかりました。彼は工場まで直接赴いて、工場側と一緒にレシピの再現を何度もしてくれて…」
こうして牡蠣をまるごと37%凝縮した、濃厚な万能ソース「まるごと牡蠣ソース」が誕生。長時間煮込んだ牡蠣の旨味と玉ねぎの甘みは、唯一無二という仕上がりになりました。
さらには、「牡蠣のこめ油漬け」も開発し、FISHERMAN‘S KITCHENとしての商品ラインナップが充実していきました。

完成した「まるごと牡蠣ソース」を販売するため、次に阿部さんはウェブサイトやパンフレットなど販促ツールの作成に取り掛かります。
「広告会社勤務時代に一緒に仕事をしていたライター、デザイナー、そして同級生のカメラマンにお願いしていろいろ作りました。でも、毎日漁に出て、牡蠣むいて、ちょっと昼寝してそれから販促ツール作って…だったから、結構大変は大変でしたよね(笑)。でも、シェフも含め優秀な仲間たちがいたからこそこうして世に出すことができたし、新東北みやげコンテストで最優秀賞をいただくこともできて、感謝しかないです」


阿部さんのこの商品にかける思いを伺いました。
「六次化って、やっぱり大きい会社が結構な資金を使ってやるもの…というちょっと“とっつきにくさ”があったんですね。でも、やり方次第では個人事業主でもできるんだよっていうロールモデルになってくれたらいいと思うんです。今、漁師の人口って本当に減っていて、12万人くらいしかいない。しかも40代以下の漁師の割合は18%くらいで高齢化も進んでいる。このままいくと、本当に国産の海産物が食べられるか…という状況になるんじゃないかと思っていて。あとは、まだ3Kみたいに思われている部分もあるんじゃないかと思うので、こうやってちょっとカッコよくブランディングすることで、若い人たちが来て新たに漁師を始めてもらえたら…っていう思いもあるんです」
海を取り巻く環境変化への危機感から生まれたこの「まるごと牡蠣ソース」は、ただただおいしいだけでなく、未来の日本の漁業も変えうるかもしれない一品なのでした。
阿部さんのこれまでのヒストリーは、「Yahoo!ニュース」でもご紹介しています。ご覧ください。