Koquela
ベビーかぶと

2024年10月7日

Koquelaは、仙台市産業振興事業団が主催する
第10回新東北みやげコンテストの受賞企業です。

優秀賞 ベビーかぶと

すやすやと眠るような愛らしい表情で、見る人、手にする人をトリコにする、えじこ型のこけし「ベビーかぶと」。えじことは、漢字で嬰児籠と書くもので、赤ちゃんが出歩かないようにいれておく道具のこと。稲わらなどでつくられていることが一般的で、普段は家の中で使用されていましたが、農業の繁忙期には、田んぼや畑のそばにも置かれていたそう。赤ちゃんが、えじこに入った様子を表現しているのが、えじこ型こけしなのです。

この商品をプロデュースしたのは、仙台を拠点とするKoquela。代表の金盛友実さんは、京都芸術大学で伝統工芸を学び、在学中に始めた「こだまプロジェクト」で、東北各地の工人を訪ね歩きその情報をInstagramで発信する活動を始めました。そんな活動の中で出会ったのが、大堀相馬焼の職人である錨屋窯13代目・山田慎一さん。


写真:「ベビーかぶと」のプロデュースを手掛けたKoquelaの金盛友実さん


「大堀相馬焼は、浪江町で350年の歴史を持つ伝統的工芸品です。浪江町は、東日本大震災で避難地区になってしまったために、福島県内の各地に場所を移しましたが、20数軒あった窯元は半数にまで減ってしまったそうです。そういうお話を伺う中で、大堀相馬焼に描かれている馬は、『左馬・走り駒』などとよばれ、右に出るものはいないという意味を持つということを教えていただきました。その昔、幾度となく他藩に責められる中、農耕馬で立ち向かい、一度も領土を奪われることがなかったという歴史を知り、地域の文化が詰まったこの左馬にとても魅力を感じたんです」と、金盛さんは話します。


写真:大堀相馬焼の職人である錨屋窯13代目・山田慎一さんと奥さまの苗美さん


それから時を重ね、大学卒業後にKoquelaを立ち上げた金盛さん。
「東北の伝統工芸をもっと多くの人に知ってもらい、東北を知って、見て、来てほしい」、そんな思いから、東北各地のこけしの卸販売のほか、こけし工人との協働でオリジナルの商品を生み出していきます。
「五月人形をつくりたいなと思ったときに、赤ちゃんをかごの中に入れていた『えじこ』がいいなと思いました。東北の農民のお母さんたちが農作業中に赤ちゃんをかごの中に入れていたことからうまれたえじこ型でつくりたかった。いろいろ思案する中で、『やっぱり男の子はたくましく育ってほしいよね』ということで、験担ぎにもなるし『右に出る者はいない』の左馬を描いたらどうだろう、と思い、大堀相馬焼の山田さんにお声がけさせていただいたんです」。


写真:すやすやと眠る姿が愛らしい「ベビーかぶと」


こけしを制作したのは、弥次郎系こけし工人の髙橋博斗さん。
「髙橋さんは、Koquelaの最初の商品である『正月こけし』もつくっていただいた、本当に技術力の高い技巧派の工人さん。人間の赤ちゃんのとてもかわいらしいデザインに仕上げていただきました。この髙橋さんのつくったこけしに山田さんが馬の絵を描いてくださったのですが、山田さんも『木に描くことはあまりないから、楽しい』とおっしゃってくださいました。大堀相馬焼とこけしがコラボしたのは、これまでにないことですし、それぞれのファンの方にそれぞれの文化を伝えるきっかけをつくれたのかな、と思います」。


写真:「ベビーかぶと」は、左馬だけでなく五月の節句に欠かせない「菖蒲」が描かれたものも


これらのかわいらしい「ベビーかぶと」は、第10回新東北みやげコンテストで優秀賞を受賞。金盛さんは「とても驚きました。私は、大学で伝統工芸を学び、論文も書いているので、つくるのであれば伝統工芸のよさや歴史を見せた形のデザインにしたいと思っていました。こうしたコンテストは新しいものでないと出品が難しいのではないかと思うのですが、この『ベビーかぶと』や『正月こけし』(※)は、その奥にある伝統こけしや相馬焼の背景とかも評価していただけたのだと思います。このような形で、東北地域に関われていることがとてもうれしいです」と笑顔をのぞかせました。

※正月こけしは、金盛さんの卒業論文とともに提出された鏡餅を模したこけし。紆余曲折を経て、髙橋博斗工人(弥次郎系)と佐藤英裕工人(遠刈田系)の手によって、制作販売に至りました。第9回新東北みやげコンテスト入賞。このこけしの誕生ものがたりは、Yahoo!ニュースで!


Koquelaは、仙台市産業振興事業団の後押しで、2024年8月には台南市で開催された「Creative Expo Taiwan」に出展し、多くの台湾の方たちに東北が生んだクラフトであるこけしを見て、楽しんでいただくことができました。さらに2024年9月に東京で行われた「インターナショナル・ギフト・ショー」にも出展し、多くのバイヤーの関心を引いていました。


写真:台南市で行われた「Creative Expo Taiwan」での展示の様子

「事業団さんのおかげでマーケティングについていろいろ知ることができて勉強になっています」。


写真:オリジナル商品だけでなく、伝統こけしを日本全国そして世界に広げる活動を行っています
(注:写真の「ベビーかぶと」以外のこけしは、ライター私物です)


こけしの魅力を日本全国、世界へ。そして、仙台、東北へと人の流れをつくっていく―。Koquelaの挑戦はまだまだ続きます。

Koquela代表の金盛さんのものがたりは、Yahoo!ニュースでもご紹介しています。ぜひご覧ください。

取材/2024年9月