新商品/新サービス開発支援
「森と蜂と」リブランディング【再掲】
「森と蜂と」
※「森と蜂と」の「初咲」(写真の一番左)が日本はちみつマイスター協会が主催する「第6回 ハニー・オブ・ザ・イヤー」の国産部門と来場者特別賞で最優秀賞の2冠を達成したのを受け、一部加筆訂正しています。受賞のコメントは記事の最後でご紹介しています。
秋保の里山の麓で養蜂場を営む山口将吾さん、梢さん夫妻。今回山口さん夫妻がつくるはちみつが、仙台市産業振興事業団が実施する「新商品/新サービス開発支援」の対象に選ばれ、リブランディングの支援を受けることになりました。
マーケッターやコピーライター、デザイナーがチームとなり、仙台市産業振興事業団がリブランディングをバックアップ。ブランドネーミングからラベルデザイン、リーフレットの制作まで、約半年に渡る伴走支援が行われました。
写真:森の中で、蜂と真摯に向き合う山口さん夫妻
今回、山口さん夫妻をサポートするメンバーは、
【仙台市産業振興事業団 ビジネス開発ディレクター】
◆大志田典明(マーケティングプロデューサー)
◆川島洋子(フードコーディネーター)
【外部クリエイター】
◇梅木駿佑(グラフィックデザイナー)
◇工藤拓也(コピーライター)
※敬称略
これまで数々の商品開発を手がけてきたプロとともに、プロジェクトがスタート。月1~2回ほどの打合せは、仙台市産業振興事業団の会議室やオンライン、養蜂場がある秋保で行われました。
写真:AER(アエル)7階に事務所を構える「仙台市産業振興事業団」。初夏のころ、会議室に集まりプロジェクトがスタートした
思いを体現するラベルデザイン
このプロジェクトがスタートする数ヵ月前に、山口さん夫妻のはちみつを味わったことがあったマーケティングプロデューサーの大志田さんは「上質な日常を送る人をターゲットにしよう」と提案。山口さん夫妻がつくる17種類のはちみつを、色や味などをもとにチャート化しました。
その上で、はちみつの中身そのものを表すラベルデザインが必要であることを説明し、「自分たちの思いを言葉にすれば、クリエイターたちがくみ取って形にしてくれる」と話します。それを受けて山口さん夫妻からは「養蜂家として、職人として、真剣に日々蜂と向き合っていること」、「四季を通して、蜂が健康に暮らすために手間暇をかけて育てていること」など、養蜂にかける熱い思いが語られます。
写真:どのような思いと手法で養蜂と向き合っているか、山口さん夫妻の言葉を全員が共有します
はちみつが生まれる場所
夏のある日、プロジェクトメンバーが実際に現地へ赴きました。森の中にありながら、青空が抜ける静かな山口さん夫妻の養蜂場。打合せで聞いてきた言葉が、プロジェクトメンバーの前に実態として現れます。
写真:秋保の里山にある養蜂場。森林に囲まれた自然豊かな環境が広がる
写真:山口さんが、巣板にスプーンをあててすくうと、艶のある黄金色の蜜がとろりとあふれ出します。一口含むと、芳醇な花の香りが鼻を抜け、爽やかな甘味が広がりました
山口さん夫妻は自身の仕事を「蜂に仕える仕事、自然に仕える仕事」と表現します。蜂の命を預からせてもらっている、自然を敬うことを大切にする。だから自然由来の養蜂で、手間暇をかけてつくる_。この矜持があってこそ生まれるのが、このはちみつなのです。
丁寧なコミュニケーションが生んだ、奇跡のブランド
山口さん夫妻が「プロジェクトはこの方なしでは成し得ることが出来なかった」と振り返るのが、マーケティングプロデューサーの大志田さんです。大志田さんは、ふたりのはちみつを見出し、ラベルデザインのリニューアルを提案。このプロジェクトを大きな推進力で形作るだけでなく、常にふたりの理解者でありました。
写真:直売所の予定地となる場所を視察するマーケティングプロデューサーの大志田さん(右)
そして、大志田さんとともにこのプロジェクトを支えたのが、グラフィックデザイナーの梅木さんとコピーライターの工藤さんでした。
「養蜂家である前に、一人の人間としてどのような方なのか。どんな気持ちで、どんなことを目指しているのか。仕事のことはもちろん、それとは関係ないことも、いろんな角度から一緒にイメージや言葉を作って、話し合ってきました」と語るのはグラフィックデザイナーの梅木さん。
コピーライターの工藤さんも「養蜂という仕事やこだわりについて聞くときは、わかったふりをしないで、理解できるまで質問してきました。また、私の提案に対しても、遠慮なく意見を言ってほしいと繰り返しお伝えし、お互いに納得がいくまで、じっくりと時間をかけてきました」と振り返ります。
写真:コピーライターの工藤さん(左)、グラフィックデザイナーの梅木さん(中央)、山口将吾さん(右)は幾度となく話し合いを重ねてきた
将吾さんは「私たちの苦労や思いを表現してくれたのが大志田さんはじめ、プロのみなさんでした。今まで1人で全部やらなければと頑張ってきましたが、心強いサポートを得られて、頼っていいんだなと思えるようになりました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです」と話します。
新ブランドは、プロジェクトメンバーとコミュニケーションを丁寧に重ね、チーム全員で思いを共有して作り上げられました。そして、コピーライターの工藤さんから提案されたブランドネームは、「森と蜂と」。
工藤さんは、「森・蜂・人(山口さん夫妻)」の3要素の関係性を山口さん夫妻の目線で表現しました」と話します。
山口さん夫妻は「『森と蜂と』には、養蜂家として、ひとりの人間として真剣に向き合っている姿を表現していただけました。これまで大切にするはちみつをどのように伝えたらいいかわかりませんでしたが、私たちがやってきたことや思いを大きく俯瞰して表現してくださいました」と話します。
ブランドネーミングが決定した後は、ラベルデザインです。グラフィックデザイナーの梅木さんから、「森と蜂と」のロゴデザインとはちみつの瓶に貼るラベルデザインが提案されました。ロゴデザインのコンセプトは「森から採れる蜜」。見る人によって、いろいろな物語が紡ぐことができそうなロゴになりました。そして瓶に貼るラベルは、ワインのエチケットのような気品を纏ったデザインに。
写真:花の蜜の名前、採取地、ロゴマーク、屋号などが配置されたラベルデザイン
ラベルの端には蜜源である花や植物の色を抽出したポイントカラーもあります。このポイントカラーは、山口さんと夫妻と梅木さんとで8時間にもわたって話し合われたそうです。ものづくりに携わるプロ同士の「濃密な時間でした」と、将吾さんは笑顔で振り返ります。
またこのラベルには、山口さん夫妻を思いやる工夫も施されています。通常、瓶にはガラス面に貼るラベルと、蓋を閉じる封緘(ふうかん)がありますが、今回はそれらがひとつとなったデザインとなっているのです。その理由を梅木さんは「瓶詰めも、ラベルを貼ることも、すべて山口さんご夫妻が手作業でされています。ラベルをひとつに統合させることで工程が減り、その分、蜂に向き合っていただけます」と話してくれました。ふたりの想いを丁寧に汲み取る作業を重ねてきた梅木さんだからこそ生まれたデザインなのです。
装い新たに出発
こうして「森と蜂と」は完成。ブランドメッセージを込めたリーフレットも完成し、2023年2月25日に直売所のプレオープンを迎えました。
写真:完成したリーフレット
改めて山口さん夫妻にこのプロジェクトについて伺いました。
「ここに来るまで10年かかりました。苦しい時間もありましたが。でも、こうしてプロのみなさんに出会えて、本気でぶつかることができて、感謝しかありません。ようやく今、殻をやぶれて新しい未来に向かうことができています」。
写真:シンプルなバタートーストにかけるだけで、極上の味わい。忙しい朝にも、豊かな気持ちを与えてくれます
写真:ブルーチーズと生ハムにはちみつをオン。ワインがすすみます
写真:上質な眠りを誘う、ホットジンジャーハニー。お湯にすり下ろしたショウガとはちみつ1さじを加えるだけ
そして、文頭でも紹介した通り、「森と蜂と」の「初咲」が日本はちみつマイスター協会が主催する「第6回 ハニー・オブ・ザ・イヤー」国産部門と来場者特別賞で最優秀賞の2冠を達成しました。
将吾さんは「お恥ずかしい話ですが、社会人になって失敗の連続で、自分が何も出来ないことを痛感させられる日々でした。何を生き甲斐にしていいのかもわかりませんでした。そんな自分でも唯一できる事が自然の中でみつばちと働くことでした。初代ではちみつ農家となり、休みなく10年を積み重ねてきました。今こうして、私たちが作ったはちみつが専門家の方々から評価頂いたこと。200人以上のはちみつファンの方から評価頂いたこと。2つ日本一を頂いたことは大変嬉しく思っています。『森と蜂と』を応援してくださった方々のおかげで、私たちは成長し、日本一のタイトルを取ることができました。ありがとうございます」と受賞にあたってのコメントを寄せてくださいました。
「森と蜂と」のはちみつは、オンラインショップで購入できるほか、秋保の直売所で購入できます。直売所では、はちみつを使ったソフトクリームも味わうことができますので、気になる方はぜひ足を運んでください。最新情報は「森と蜂と」の各種SNSで更新されるので、そちらもぜひチェックを!
森と蜂と
〒982-0241 仙台市太白区秋保町湯元行沢12-4
URL https://morino83.thebase.in/
Instagram https://www.instagram.com/mori.no83/