仙台市地域企業課題解決マイスター

MEISTER#10

鈴木 康夫
Yasuo Suzuki

一般社団法人アグロエンジニアリング協議会会長
工学博士

専門分野
食品化学工学、知的財産権(知財経営)

ネットワークをフルに活用して
東北に新たな産業を生み出していく!

一般社団法人アグロエンジニアリング協議会会長として、東北の産業発展のために日々奔走している鈴木先生。専門は、食品化学工学です。

「東北大学の工学部で化学工学っていうのをやっていました。食品産業と森林、海洋…それに工学エンジニアリングを用いる『アグロエンジニアリング』というのが私の専門で、学位論文も魚油から超臨界CO2でEPAとDHAを分離する内容でした。水産、農業に、エンジニアリングをどういうふうに利用するか、展開するかというのが最大の関心事です」。

仙台市の御用聞き事業のほかにも、一般社団法人東北経済連合会のアドバイザーとしても活躍している鈴木先生は、一般社団法人アグロエンジニアリング協議会の会長を務めています。これは、東北大学工学部を中心とした幅広い知見を持つ先生たちが、主として一次産業関連企業の課題解決に対応するという組織です。

鈴木先生は、「つい最近かかわったのは、石巻の水産加工会社から『牡蠣の殻をむく超高圧処理機があるんだけれど、夏場は遊んでいるからどうしたものか』っていう話を聞いたんですね。それで、その話を協議会にいる先生方に話をしたら、東北大学の農学部の先生が『大豆に使用してみたらどうか』という話をしてくれた。大豆に圧力をかけるとGABA、つまりɤアミノ酪酸が50倍くらいに増えるっていうんです。それをまた協議会に参加している企業さんに定例会で話したところ『うちがやりたい』と手を挙げてくれた。そうしてつくったGABAの大豆を今度は地元の味噌醤油工業組合や代替肉製造会社が使いたいと手を挙げてくれた。農業、漁業にエンジニアリングを活用しつつ、こうやっていろいろな人、モノをつなぐということを私はやっているんです。やっぱりね、ネットワークが大事だと思うんですよ。だって、ひとりではなにもできないですから」と話します。

そのほかにも、協議会会員企業などからの依頼で、水熱反応を利用した米油の抽出、微生物を使ったタンパク質分解、LED光照射による甘草などの薬草の発根促進などのプロジェクトに取り組んでいるという鈴木先生。さらには、北海道の帯広畜産大学で行われている牛の食糧に水熱処理白樺を食べさせてその肉質をよくしていくという研究の場に足を運ぶなど、フィールドワークも活発に行っています。

「東北はね、農業も漁業も盛んで、ものすごくポテンシャルのある場所。でも、たとえば農家の方が『超高圧処理機をつかってなにかやりたい』とかいってきてくれることってほとんどないと思うんですよ。だから、私たちみたいな立場の人間が新しい産業を夢見て、もっともっと情報を発信していかなくてはダメなんです。東北の産業を、いろんな人たちの知恵とネットワークでもっともっと盛り上げていく。それが私の夢ですね」。

これからも鈴木先生は、その軽いフットワークで東北に新しい産業を生み出し、イノベーションを起こしていくことでしょう。

略歴
東北大学にて化学工学を専攻。宮城県産業技術総合センター所長、宮城大学教授、東北福祉大学教授を歴任。2017年一般社団法人アグロエンジニアリング協議会を設立。株式会社エフ・アール・エフ代表取締役も務める。

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